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君若星辰 汝、星のごとく
2022-08-04 / 凪良ゆう / 講談社、皇冠文化 / 352
2024-1-18
この作品には四つの章を挟むように〈プロローグ〉と〈エピローグ〉が置かれています。そんな〈エピローグ〉に読み進んだ読者は、そこに”えっ?えっ?”というまさかの驚きの感情を見ると思います。〈エピローグ〉のことなので、ネタバレを考えるとはっきり書くことは避けたいと思いますが、そこには”デ・ジャブ感”を感じる記述の中に、全く違う思いが読者自身の中に去来するという、まさかの物語が記されていました。そして、そんな読者は〈プロローグ〉を必ず読み返すことになると思います。全く同じものを見ているのにも関わらず、その背景を知ることで、人の心は正反対に揺れ動くということを読者に体感させる鮮やかな結末。これには、凄い!という言葉以外浮かびませんでした。 -
スター・シェイカー
2022-01-19 / 人間六度 / 早川書房 / 413
2024-9-6
SFの醍醐味のひとつ「壮大なホラ話」をお腹いっぱい味わえる。サイコキネシスによる物体の破壊ではなくテレポーテーションによる衝突破壊、高速道路のサービスエリアが独立国となっている荒廃した未来社会など、「設定」の面白さ、発想の奔放さが際立っている。設定自体の凝りに凝ったアイデアだけで突っ走るくらいの乾いた娯楽作で行って欲しかったくらいだが時折感情がウェットになるところが個人的には少し好みに反した。もしウェットな感情を描くのであれば、個人的にはそのSFでなければ成立できない特殊な設定下におけるその世界の住人たちの心性の在り様が、「現実世界におけるわれわれの心性」に普遍的なものとして何かしら訴えかけてくるものが欲しかった。SF以外の小説では書けない現実のわれわれの感性を再構築するような、そういうところに踏み込んだものがあればなお良かったかなと思った。 -
満月珈琲店の星詠み~ライオンズゲートの奇跡~
2021-12-07 / 望月麻衣 / 文藝春秋 / 238
2024-4-27
星詠みについては前2作ほどではなく、それぞれの視点からの長編でした。 鮎川さんの親の話で、とても真っ直ぐで強い藤子さんの過去から現在が書かれています。 「恋愛感情なんて大きな愛の中のひとつでしかない」なんて、カッコいいなぁと思います。 3作の中では1番好きです。うっすら涙しました。みんな幸せになってほしいですね。 -
复仇之爱的囚笼 復讐の甘い檻
10话 / 2021-10-29 / コヤマナユ / 一迅社
2024-6-10
家同士が政敵で離れ離れになった恋人同士。一家を皆殺しにされた男は数年後、隣国の大公になり、贖罪のため修道女になった元恋人を愛人として囲う。 -
暗祓 闇祓
2021-10-29 / 辻村深月 / KADOKAWA / 416
2024-7-16
バラバラにおもえた戦慄の物語たちが、見えない糸で縫われてつながっていく… これはホラーであり、虚構であり、現実である。 -
ブランクスペース (2)
2021-09-15 / 熊倉献 / 小学館クリエイティブ / 182
2024-5-13
バカで能天気なショーコと内気で読書家のスイは同じ高校のクラスメートだった。スイの「頭で考えた物が他人には見えないが具現化する能力」をショーコが知ったことがきっかけで友だちになる。 学年が変わりお互い別クラスになるとスイはいじめられるようになり、物騒な物・生き物を具現化するのではと思いきや、恋人を具現化することに成功した。ショーコはスイの変わりぶりに戸惑いつつも受け入れつつあった。しかし以前スイが頭で考えていた物騒な生き物が具現化していたかもしれないと気付く2人。 -
青空と逃げる
2021-07-21 / 辻村深月 / 中央公論新社 / 457
2024-7-12
ほっこり系かなと思いきや、深刻な事情を抱えた母と息子の逃避行話。 東京から各地に逃げるのだが、四万十だったり岡山の家島だったり別府だったり風光明媚な観光地ばかり。 旅行しながら書かれたのかな。 少年の心の揺らぎが瑞々しい。