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ブランクスペース (2)
2021-09-15 / 熊倉献 / 小学館クリエイティブ / 182
2024-5-13
バカで能天気なショーコと内気で読書家のスイは同じ高校のクラスメートだった。スイの「頭で考えた物が他人には見えないが具現化する能力」をショーコが知ったことがきっかけで友だちになる。 学年が変わりお互い別クラスになるとスイはいじめられるようになり、物騒な物・生き物を具現化するのではと思いきや、恋人を具現化することに成功した。ショーコはスイの変わりぶりに戸惑いつつも受け入れつつあった。しかし以前スイが頭で考えていた物騒な生き物が具現化していたかもしれないと気付く2人。 -
萤火虫之墓 アメリカひじき・火垂るの墓
2009-02出版 / 南海出版公司 / 246页
2024-6-25
読点が長々と続く文体は読みづらいが、これ以上に焼跡闇市にふさわしいものはないのかもしれない。息せきって話すときのような混乱した感じ。読み直さなければすっと入ってこないような文章だが、リズムに乗ってくるとあれよあれよと読むのが止まらない。あの戦時下が鮮度を保ちそこにある。戦争孤児がどれだけお腹を空かせていたか、戦争がなにを変えたのか、それは知りようもないが、こうして読むことができることがありがたい。答えを簡単には出さず、むき出しの体験があるだけ、だった。 -
怪画谜案 変な絵
2022-10-20 / 雨穴 / 双葉社 / 288
2024-8-27
出てくる絵がどれも不穏でゾクッとする。本文に情景描写がほとんどないのは、絵に集中させるためなのか。また、怪談話のような余計な部分を削ぎとった簡潔な文章も怖さをひきたてている。無理な展開がなく、でも凝っている物語の運び。一気に読んでしまった。 -
尸人庄谜案 屍人荘の殺人
2017-10-12 / 今村昌弘 / 東京創元社 / 336
2024-9-9
かなり特殊な状況から生じたクローズド・サークルものだが、トリック自体は「本格」を逸脱しているわけではなく、その唯一無二の設定ゆえに「本格」のルール内であっても、この状況でないと起こりえないかなり独創的で斬新なものになっているのが魅力。なので作者が文章でミスリードするような策を弄さなくても、物語の中で登場人物たち自身が何気なく犯してしまうミスによってトリックを成立させているところが素晴らしく、こういう場合にありがちな都合のいい強引さがなく思わず納得してしまうくらい自然なその出来栄えは、やはりこの独自性の高い状況設定がゆえだろうと思う。たまに出てくる主人公たちのラノベっぽいのりと、状況のシリアスさとの間に違和感を覚えるところがあるのが唯一の不満。 -
仓惶 ヘルタースケルター
9话 / 2003-04-08 / 岡崎京子 / 祥伝社 / 315
2024-3-18
この物語のすごいところ、そして怖いところは、りりこ自身がいずれ視聴者に飽きられると達観しているところ。達観すれども受け入れられない彼女の、周囲を巻き込んだ壮絶な悪あがきが何百ページにもわたって描かれる。 -
探偵映画
1990-12-05 / 我孫子武丸 / 講談社、文藝春秋 / 237
2024-7-22
映画監督が撮影半ばにして失踪。 スタッフや俳優が、映画会社の倒産を免れようと、懸命に続きのシナリオを考え制作する。 軽快でおもしろかった。 映画における叙述トリック、こういわれて思い浮かぶのは『シックス・センス』。 著者の映画好きが漏れておりさまざまな映画が出るわ、出るわ……思わぬところで『百年の孤独』も。 -
満月珈琲店の星詠み~ライオンズゲートの奇跡~
2021-12-07 / 望月麻衣 / 文藝春秋 / 238
2024-4-27
星詠みについては前2作ほどではなく、それぞれの視点からの長編でした。 鮎川さんの親の話で、とても真っ直ぐで強い藤子さんの過去から現在が書かれています。 「恋愛感情なんて大きな愛の中のひとつでしかない」なんて、カッコいいなぁと思います。 3作の中では1番好きです。うっすら涙しました。みんな幸せになってほしいですね。 -
君若星辰 汝、星のごとく
2022-08-04 / 凪良ゆう / 講談社、皇冠文化 / 352
2024-1-18
この作品には四つの章を挟むように〈プロローグ〉と〈エピローグ〉が置かれています。そんな〈エピローグ〉に読み進んだ読者は、そこに”えっ?えっ?”というまさかの驚きの感情を見ると思います。〈エピローグ〉のことなので、ネタバレを考えるとはっきり書くことは避けたいと思いますが、そこには”デ・ジャブ感”を感じる記述の中に、全く違う思いが読者自身の中に去来するという、まさかの物語が記されていました。そして、そんな読者は〈プロローグ〉を必ず読み返すことになると思います。全く同じものを見ているのにも関わらず、その背景を知ることで、人の心は正反対に揺れ動くということを読者に体感させる鮮やかな結末。これには、凄い!という言葉以外浮かびませんでした。 -
魔女の原罪
2023-4-24 / 五十嵐律人 / 文藝春秋 / 368
2024-8-10
情熱に溢れた一作品。 テーマは個人とはなにか、かな。 日本では、犯罪加害者の家族までも罪を着せられる風潮にある。アメリカなどでは、加害者の家族は、被害者と同様に、憐れみや同情をもたれることが多い。それをこの物語で知った。 途中から変調するストーリー。 『法廷遊戯』もそうだったが、法律の穴、法と人とを考察させる。 -
スター・シェイカー
2022-01-19 / 人間六度 / 早川書房 / 413
2024-9-6
SFの醍醐味のひとつ「壮大なホラ話」をお腹いっぱい味わえる。サイコキネシスによる物体の破壊ではなくテレポーテーションによる衝突破壊、高速道路のサービスエリアが独立国となっている荒廃した未来社会など、「設定」の面白さ、発想の奔放さが際立っている。設定自体の凝りに凝ったアイデアだけで突っ走るくらいの乾いた娯楽作で行って欲しかったくらいだが時折感情がウェットになるところが個人的には少し好みに反した。もしウェットな感情を描くのであれば、個人的にはそのSFでなければ成立できない特殊な設定下におけるその世界の住人たちの心性の在り様が、「現実世界におけるわれわれの心性」に普遍的なものとして何かしら訴えかけてくるものが欲しかった。SF以外の小説では書けない現実のわれわれの感性を再構築するような、そういうところに踏み込んだものがあればなお良かったかなと思った。 -
成瀬は天下を取りにいく
2023-03-17 / 宮島未奈 / 新潮社 / 208
2024-4-11
好奇心旺盛で我が道を行く成瀬は学生時代に憧れたキャラ。そして、どこか不器用だったり不完全なところも共感できて自分と重ね合わせたりして。素直に面白かったです。