Again～再会のまちかど～ 游戏

３月１日、晴れ。
　午前７時３５分、大日本航空第７７６便は羽田空港を後にし、定刻通り目的の地へと向け飛び立った。
　シーズンオフで乗客もまばらなその便に、頬杖をついてひとり物思いにふけっている青年の姿がある。
　彼の名前は小野寺優助、この物語の主人公となる青年だ。

　彼はなぜ、かの地に向かっているのだろうか？
　事の始まりは、彼が右手に握っている一通の手紙にあった。
　その手紙が彼の元へ届けられたのは、去年の暮れの出来事。
　手紙には「貴方に会いたい」と一言だけ書かれており、差出人の名前はなかった。

　しかし、手がかりが全くないというわけでもなかった。
　手がかりとなったのは、その手紙の消印にあった。
　『２００２年１２月４日　函館郵便局』
　旅先から出したとか、どうしても居場所を知られたくない人が出したのではない限り、差出人は函館に住む誰かということになる。

　「――――！？」
　消印を見て優助は、ハッとなった。
　実は彼にとって函館は、少年時代の約１０年間を過ごした想い出の街なのだ。
　そして、その街には彼が特別に親しくしていた３人の女性の存在があった。

　皆原あゆみ、優助の家の隣に住んでいた同い年の女の子。
　遊ぶのも学校へ行くのもいつも一緒だった正真正銘の『幼なじみ』。
　優助が少年時代にもっとも親しくしていた女性といっても過言ではない。

　


　澄川美春、向かいの家に住んでいた優助より４つ年上の女性。
　一人っ子であった彼女は、優助のことを実の弟のように想い、接してくれたひとだ。
　優助にとっては、初恋の相手にあたる女性である。

　


　皆原結、あゆみの妹で優助より３つ年下の女の子。
　いつもあゆみの後ろにくっついて、とことこと歩いていた、とても明るくて人なつっこい女の子。
　優助にとっては妹とも思える存在であった。

　


　確たる根拠があるわけではなかったが、優助には自信があった。
　手紙の主はこの３人のうちの誰かに違いない、と。
　それで、当時浪人中であった彼は、急きょ自身の志望大学に函館の大学を加え、現在に至っているというわけだ。

　やがて、優助を乗せた飛行機は目的の地に到着する。
　彼にとっては８年ぶりとなる函館の街並み。
　空港を出た彼は、自分が住むことになるマンションへと向かった。
　ダンボールが山積みとなった部屋。



　新しい土地での新しい生活――やるべきことは山ほどある。
　しかし、彼には何よりも先にやらなければならないことがあった。
　彼は部屋を出て、自身が少年時代を過ごした場所に向かう。
　そう、手紙の主を探すために。

　想い出の彼女たちと再会をするために――。