お目覚めですか、ご主人様」
見覚えのある部屋の景色。
しかし、目の前には面識のない一人の男性がいた。
【コクーン】
病床、人手不足を補い、孤独死などを減らすため、
現代社会ではごく一般的に普及している介助型アンドロイド。
どうやら彼は、事故に遭い療養中の私の元へ派遣されてきたらしい。
私をご主人様と呼び、介助という目的を従順にこなす彼を見て、私は「ナツメはナツメらしく接してほしい」とお願いをした。
最初は戸惑いを見せるものの、すぐに私たちは打ち解けていった。
療養生活は、想像以上に充実をしている。
私はナツメの献身的な介助のお陰もあり、順調に快方に向かっていた。
それは、アンドロイドの彼と過ごす
一度きりの夏だった――
≪【コクーン】とは?≫
病床、人手不足の解消と孤独死の防止を目的に近未来の日本で一般的に普及している介助型アンドロイド。
要介助者を保護する繭のような役目からこの名がつけられた。
人の細胞から作り出されており、体自体は人間そのもの。
脳だけAI技術を転用したシステムを採用している。
対象家庭への派遣用として作られており、介助の手段や病状、患者の要望に合わせた仕事をこなせるよう凸型(男性型)と凹型(女性型)の二種類が存在する。