La lune froide 游戏

かつて、世界は広大な虚無であった。
　その果ての無い漆黒の中にたった一人、神と呼ばれた存在が在った。
　神は二振りの剣を持って、虚無を四つに切り裂いた。
　虚無の欠片は海となり、空となり、大地となり、そして星となった。
　神は新たな世界へ生まれ落ちた人間達に、剣を授けた。

　黒のテネブラエ―――白のルクシス。
　相反する力を持つ剣は、互いに交わることのないように、
　始祖たる人々の手によって、北と南の大地へと沈められた。

　それは遥か数億年の昔、創世の記憶。
　世に言う、双剣の神話である。

　そして人間の時代を迎え、争いの歴史が繰り返される中で。
　二つの剣はその息吹を取り戻し始めていた……。

　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

　1365年、秋。
　イヴェール大陸南東部に、エーレルという名の小さな農村がある。
　そこに、一人の少年の姿が在った。
　少年の名は、リュヌ。
　村の一大行事である豊穣祭を控え、村人達はいつになく浮き足立っている。
　穏やかで平和な村の暮し、それが永久に続き、繰り返されるのだと誰もが思っていた。
　夕刻、思いも寄らぬ悲劇が訪れるまでは。