雀が鳴き、烏が鳴いて、夜が明ける。ここは箱根山中天下のお関所、この関所を指して、三島の方からと小田原の方からと、旅芸人の群れが上って来る。「此処は天下の関所、手形がなくば通ることまかりならん」との一喝に、もとより手形など持たぬ浮草の身は、一縮みに縮み上ったが、粋なお役人が現れ、手形代りに一芸致したる者は通してやるとのことで、まず最初に猿の踊り、そこへ犬が飛び込んで犬猿の拳闘となり、それが次第に踊りと変り、遂にタンゴを一曲踊る(以上、欠落部分を『キネマ旬報』及び『映画教育』のあらすじより補足)。次は中国人の手品師で、8人のおもちゃの兵隊に「おもちゃのマーチ」を歌わせ踊らせ、最後にギターのような楽器を取り出し、「東京行進曲」を歌うが、曲が進むにつれ、関所内の人々は浮かれて踊り出し、曲はさらに野を越え山を越えて、兎の耳に入り、狸の穴に入り、熊までが踊り出す。その踊りの最中に、突如、剣戟屋が飛び込んで来て、口論となり、大乱闘となって、兎や狸が斬られ、熊と馬の首が斬られて付け替えられてしまう。その騒ぎに役人も大いに驚き、「もうよい、通れッ」と言えば、一同、十日戎の曲を賑やかに噺しながら、桜の散るなか、右と左に去って行く。
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