御手洗幽水

才能溢れる画家の卵だった。しかし絵の道に行ったのも親の目を引くため……。
生まれつき病弱だった妹の霊奈。両親は霊奈に付きっ切りで幽水に費やす時間はほとんどなかった。
『お姉ちゃんなんだから我慢しなさい』
その言葉を聞き続け成長してきた幽水。自分と同い歳なのに……。
幽水は毎回、その言葉を飲み込んでいた。幽水の心は成長するにつれ荒んでゆき、親から離れていく。妹の事は嫌いではなかったが、仲が良いとはいえない関係。
なんとか姉妹、仲良くなりたいと思っていた幽水だったが、どうしても親を独り占めしていると思ってしまい、上手くきっかけがつくれないでいた。
そこで考えたのが妹を描いた絵。それをプレゼントしようと意気込む幽水だったが、その絵が完成する前に妹はこの世を去ってしまった。それっきり幽水は絵を描くことをやめてしまう。