父の残してくれた漁船で海に出はじめて二ヶ月。念願のアタリが来た! 必死の思いでマグロと格闘をはじめたエンだったが相手はかなりの大物。初心者のエンの手に負えるわけがなく半ば諦めかけたその時、一隻のマグロ漁船が接近。見知らぬ男がエンの船へと乗り移り、見事な手さばきで釣り上げを助けてくれた。名も告げずに去ってゆく男を、感動のあまりに礼をいうことさえ忘れて見送るエン。だが、その日の夜。世話になっているオカマのケンちゃんが営む居酒屋で祝杯をあげていたエンは、偶然にも、海で助けてくれた男と再会する。秋山祐二――『大間の伝説の漁師』といわれるマグロ漁の名人。俳優を思わせるような整った容貌に渋い声。それでいて寡黙な人柄。妻子に家を出て行かれ一人身で暮らす秋山。やがてエンは、あることがきっかけで秋山と関係を持つように……。その後、住み込みで秋山から漁を教わることになったエンは、漁師としても尊敬する秋山に次第に心惹かれ、さらに関係を深めてゆく――。だがその矢先、家を出て行ったはずの秋山の妻子が戻ってきた。秋山にふさわしい幸せは――。とても人には言えない過去を持つエンは、秋山との関係に『終わり』を見てしまう。そして、荒れる海へと船を出し、たったひとりで沖を目指すのだが―――。
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