kronprinzenwerk » 日志
『最果てのイマ』 名言集
2023-4-9 14:53 /
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IMA:category1
a far song ~カナタノウタ~
あずさルート1
沙也加ルート1
笛子ルート1
葉子ルート1
IMA:category2
あずさルート2
沙也加ルート2
笛子ルート2
葉子ルート2
IMA:category5
戦争編
あの頃の僕等に
エピローグ
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IMA:category1
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「a far song ~カナタノウタ~」
何も知らずに生きてた
何にも触れることもなく
すべて終わると知っていた
そして僕は解き放たれ
いびつな眩しいもの
それは美しい猛毒
壊れる世界の果てに見た
果たされぬ約束
深く遠く囁く声
遠き日の黄昏
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―――彼らはいつも7人だった。
わずかな時さえ惜しみ、町外れの廃工場に集った。
忘れ去られ、錆と砂埃を胎に積もらせた直方体。
殺風景でありながらどこか情趣さえ漂うのは
かつて満ちていた人の息吹が乾燥し
空間に薄く哀愁を添えているせいだ。
過去の栄華に思いを馳せるように……
見る者の胸を、打つこともある。
若者たちは、しかし異なった所感を抱く。
忘却された世界を、所有者なき領土と受け止める。
老いたものを、若者が受け継ぐ。
世界が連綿と繰り返してきた摂理をなぞり、彼らはたまり場を得た。
家庭でも世間でもない安息の場所。
誰が《聖域》と呼んだ場所。
……世界は偽りと裏切りで満ちている。
人と人は傷つけ合う。どんなに親密でも衝突は避けられない。
しかし。
たとえ接触が傷つけあいだとしても、それは相手が実在することの証拠となる。
だからこそ生身の絆は、かけがえのないものとなるのだということを……
千々に撒かれたパズルのピース。
どうか、優しく配列されますように―――
Forever long. No matter how far is.
For the somebody one... For the one that will meet someday.
At the place that I can see nothing. But, the memory.
The script meaningless.
But the technique.
He's Aulelius, the King, King of mankind and breaks the barrier of species.
7人の間で繰り広げられる、理解と共感、反発と衝突。
そして、思春期の淡い恋愛感情。
永遠に続く友情。
そんなまどろみのような幸せの中に、ずっといられる―――はずだった。
Aware of "that" will change the world surrounding us.
Will reach to the new world, will arrive to the "sanctury".
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あずさルート1
01 イマ ーーChapter 工場への道
ここには人はいない。
一人で訪れれば、自らの存在さえ忘れてしまいかねない。
人は自身を直接見ることはできないからだ。
無人が浸透した背景は、自己性を曖昧に喪失させる。
人が人でなくなる道を越えた先、聖域は置かれている。
02 イマ ーーChapter 工場への道
ユートピア幻想はとうに過去のものだ。
崩壊し、残骸と化した。
瓦礫の骸に、自分たちだけの小さな、不完全な安息の地を求めるしかない。
それが現代という時代である。
だが忍は満足していた。
極限の楽園など知らない世代。
高度成長の末に訪れた、灰色の長き停滞。
停滞の中から生まれ出た彼らは、希望を体感することなく育った。
明るい未来。
結婚。出産。豊かな暮らし。
幸せな家庭―――
言葉としては理解できるが、印象としては幻想神話の類である。
03 イマ ーーChapter あずさとともにいる
現在を生きる少年たちに、与えられる希望はあるのだろうか。
高度成長期と呼ばれた時代、未来は輝いていたのだろう。
疑う余地もなかったろう。
しかし当の未来社会、21世紀現在はどうだろう。
どれほどの希望が残されていると言えるだろう。
年月が進むごとに、科学や数学などの物理が、夢の終わりを浮き彫りにしていった。
経済的繁栄はあったが、それは平地が少ない島国の汚れなき土地を、醜く祭り上げる幻像に過ぎなかった。
決定的な破局もなしに、ユートピア幻想は霧散した。
最初からそんなものありはしなかったのかも知れない。
そして無気力の時代に、若者たちは生まれた。
彼らにできる反抗は、耽溺と逃避のみだ。
歳経ることにより、ようやく第三の選択……リアルに生きることが見えてくる。
それは希望とはほど遠い、虚ろな生命維持。
充実も見返りもない日々だった。
疲れ果てたら、なすすべもない。
04 イマ ーーChapter とある夜
世界は限りなく広大であるため、個体が全てを知覚することは不可能だ。
人は進化し世界を広げた。
外界に視点を向け、無限の広がりをよいものとした。 地に満ちよ。
神は人の子にそう命じたと記される。
地を埋め尽くして、海に、空に、空の先に、無限に。
極限まで膨張することは破滅と同義だ。
だから広がるという行為は完全には肯定されるべきものではない。
世界が有限であるためだ。
どこかで、折り合いをつけなければならない。
人の文化が停滞したように。
そもそも個体の知覚できる範囲は、さらに限られたものである。
個にとって、人類の版図が拡大する意味は、今やほとんど失われている。
自分の居場所があれば良い。
だからこそ、衰退ははじまったのかも知れない。
辿り着くのは、聖域の個室化でしかない。
一人一人のエゴと合致する心地よい場所は、心のうちにしかないのだから。
05 笛子妹 ーーChapter 夢-1
ジコセキニンは他人にしか適用されないの。それが21世紀イズム。それが21世紀ドリームよ。
06 沙也加 ーーChapter 退屈日和
4000年前の蓮が咲くように、古い情報はいずれ花開くかも知れない。
情報は物質の状態だから、積層されていく。そしていつか誰かがそれを読む。
読まれ、理解された情報は浄化・再構築されてまた記録される。
リンクを残しながら―――
07 イマ ーーChapter 孤立
強者には権利以上に義務が求められる。
罪に先立つ悔恨が、そこにはある。
決断者として切り捨てる何かに対し、罪悪が発生することが確定されているためだ。
法はともかく、万民の倫理に一致する善は存在できない。
08 あずさ母 ーーChapter 母
右に行けば右に行ったことを叩く、左に行けば左に行ったと責める。まるで狂気の扇動者ね。
誰も責任を取るつもりはないくせに、人のすることには当然の権利とばかりにくちばしを突っ込みたがる。
彼らは敵が欲しいのね。味方を率いて、勇ましく立ち向かいたいのよ。闘争心を制御できないの。
だから積極的にそれを見つけ出そうとする。大きな戦いのうねりに乗っていたいのよ。
そうして彼らは、私たちのような攻撃しやすい社会的弱者を狙うのね。
滑稽だと思わない。まるで麻 薬だもの。社会的正義という気持ちよいうねりに乗りたい。そういうことでしょう。怒ることは心地よいものね、
他者を糾弾することは。
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沙也加ルート1
01 イマ ーーChapte 沙也加との出会い・2
戸惑いが表に出るタイプでもないため、ごく大人しい少年に見えるに過ぎない。
内面には、無垢といえば聞こえの良い、情緒の育ち損ねた虚無の穴がぽっかりと無数に空いている。
穴はあらゆる喜怒哀楽を底へと吸い込む。
人の有髄神経の軸索は髄鞘が形成されねば機能を果たすことはできない。
02 イマ ーーChapter 抱擁
絶対的な正義が曖昧になった現代である。
相反する概念に立たされる登場人物の葛藤とその結果は、いずれかを選択するものであることが多い。
それは明確な是非ではなく、左か右の選別とも似ている。
どちらも正しくまた誤りとされ、結果、全ての物語は“人を選ぶ”ものとなった。
人が生み出してきた無数の価値観は、時代とともに変化し、硬質化を迎えている。
たとえば勧善懲悪は否定されるが、その理由は単純だ。
誰にでも人権がある。
正当な手続きのない断罪が非―――感心できない、とされるのは当然なのだ。
子供にサンタクロースが存在するという教育は、人格を歪め侵害するものとして非難されるようになった。
未成年の人格を拡大する反面、虐待が増加していることも事実だ。
峻別には、理性的な社会基盤が必要となる。
忍には、今の社会がそれを備えているのかどうか、判断できない。
例えば自己責任の概念。
これは近年もっとも拡大したものの一つだろう。 ただしもっぱら、自業自得を正当な結果とするための演繹として機能する。
あらゆる行動は糾弾対象になりうるということだ。
行動するなら攻撃されることを覚悟すべきだ、という論調が社会に定着している。
行動は社会的制裁のため晒される可能性がある。
インターネットは事実関係ならびに個人発言を固定化する力があり、相互監視社会を塗り固めることを促進した。
実際の善悪よりも、多数派にとっての感情が優先され、正当化されることがある。
ただ法に背かないというだけでは、非難を免れることはできないのが近代だ。
法の枠組さえも越えて、人は生きねばならない。
多数派に寄り添うような価値観を身につけること。
この曖昧な掟を、子供の頃から誰もが身につけようと労苦する。
冷静に考えれば、比較的容易なことなのだ。
結果、危険性も減少し安定した生活を手に入れることができる。
節度ある大人とは、そういうものを差すようになってもいる。
社会の構成員になれば、逸脱することは困難だ。
人々のまなざしには社会的制裁に直結した威力がある。
元来は異なった原義の自己責任という言葉は、責の最終的な帰属先として用いられるようになった。
それに応じることのできる倫理的に完全な存在は、ない。
結果、リスクのある行動への意欲をスポイルする態勢ができあがる。
多少息詰まるが、人に迷惑はかけられない。
誰もがそう考えるべきとされた。
80億の人類で、ひとつの地球をわけあっていた。 表面上は等分に。
現実問題、たぶんに差別を含んではいたが。
権利については、人が享受しうる総面積を上回っているのかも知れない。
一人一人の権利はあまりにも大きすぎた。
実際に機能するのは、多勢の側に立つ者の権利であることが多かったが。
だからだろうか。
小説で価値観を提示することは罪になった。
03 イマ ーーChapter 抱擁
イデオロギーの是非など、忍にはどうでも良かった。
物語としてはそれでも楽しいのだから。
ただ、何が正しいのか。
何が誤りなのか。
その正しさは、現実的に実現可能なのか。
不可能であるならば、代案としてどうすべきなのか。
結論の出ない命題だけが、捨て置かれた。
だから、世界はテーマを失ってしまったのではないか。
04 忍 ーーChapter 章二のヨタ話
法律もローカルルールも、どっちも完全に守ろうと思ったら……その人は、何もできなくなると思う。
この二つのルールは、時に入れ子になって部分を交換しながら、大きな流れに沿って人を押し流すんだ……
それがこの国の人間が言う、正しいってことなのかな。
05 沙也加 ーーChapter ブチとマルの墓参り
孤独は私を傷つけなかったけど、心の循環から外れた私は滋養を得ることはできず、摩耗していく自分を予見してきた。
丘に打ち上げられた魚が過ごす最期の時のように。
友達が欲しかったわけじゃない。必要だったわけでもない。
でも……この体は社会を必要としていて、人並みに疲れもしたし脆く壊れることもあった。
社会に身を置くしかなかった。
その中で、私はいつか訪れる、周囲の圧力との葛藤の時を待っていた。
06 忍 ーーChapter ブチとマルの墓参り
一人だけが存在するということは、自我と世界が同じサイズになるということだと思う。
有効射程は認知限界までだけれど、定義としてはそうなる。
結局は、自分の内面を旅しているのと変わらない。
その意味で、僕も君も、不変の結果に至る同種のものなのかもね。
07 忍 ーーChapter ブチとマルの墓参り
ホルモンや心理的錯覚で人を好きになるというのは、皆がそうしていることだけど、口にしてしまうととても虚しいことだ
でも反対に、とても自然なことでもある
そんな魂の神聖不可侵な面さえ否定された世界で、人として立ち向かう方法があるとすれば……それは自己規定しかありえない
僕のことで言えば、外に向かって旅をはじめるのもそう決めているだけのことで、可能性に期待してのことではないところがひどく非人間的に思える
外か、内か。この選択は、僕や沙也加みたいな孤人には、どちらでも同じなんじゃないかな?
08 沙也加 ーーChapter ブチとマルの墓参り
人は誰もが自由を望むけど、本当に他者や外部からの干渉を一切受けないそれに……耐えられる人間はいないわ
09 忍 ーーChapter ブチとマルの墓参り
確かに生きるだけなら一人でもいいさ。けど……それはもっとも低い段階の欲求だけのことなんじゃないかなって
上を見れば、外を見えれば、その外縁に応じた絆があって良いと思うんだよ
10 イマ ーーChapter デート(仮)~甘酸っぱい何かのために~
空はいつだって黄昏で満ちていたし、それは忍が生まれた日からしてすでにそうだった。
誕生と同時に終焉を知らされることは、いかなる悲劇にも勝るあきらめを植えつける。
虚無の花に育つ。
80億人類の栽培した虚無の花畑が、今だ。
輝かしかった未来展望はどこに行ったのだろう?
11 沙也加 ーーChapter デート(仮)~甘酸っぱい何かのために~
私たちは互いに他者にはなれない
求めて近づけば、結局は一体になるしかない。自分の延長
そして離れれば他者であるが故に、遠く届かず満ち足りない
理想の距離がどこにあるのか、私たちは知らない
今までの、誰も知らない
皆、自分なりの距離を規定して、それで満足しただけよ
互いのプライバシーを尊重する位置を受け入れ、あるいは、相手の大半を支配する距離を是認し、そしてつかず離れず死ぬまで模索し続け……
覚悟という思考停止が、その絆が成就する時なのよ
その中に正解といえるものは何一つ存在しないのよ。ただ誰もが納得するしかなかっただけ
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笛子ルート1
01 イマ ーーBlog 公序良俗
あまりにも正しすぎる基準線は必ずしも万民の眼前に快楽を提供するものではないため、であると考えられる。
人の倫理は、その時々に応じて正義と悪の間を漠然と彷徨うものであり、時に入れ子となり、周辺の空気に同調するのである。
反対に完全な規律のみによって描画される世界は、明確な像を結び把握しやすい。
02 イマ ーーChapter 眼鏡探して
眼鏡がないと世界が霞む。
世界が揺らげば自分も霞む。
認識の上で、内面と外の世界が、密接な相関関係にあるように感じられる。
これはある意味、事実だ。
人の認識を育む糧が、外界からの刺激であるためだ。
だから外が変化すれば、内も揺らぐというのは正しい。
03 イマ ーーChapter 勉強・忍&あずさ編
学ぶという行為はどこまでも気高く美しい。
知識がたくわえられる日々は金品を貯蓄する喜びに勝り、今まで太刀打ちできなかった問題を分解しきった瞬間は全知全能になった錯覚を呼び起こす。
歴史という古い出来事には新鮮な驚きが隠され、
解を導く数字の技法は芸術性さえ帯び、
母国語以外の言葉ではじめて意思の疎通を果たせば溢れる童心はとどまることがなく、
物理が示す世界のルールは想像もつきないものであり、
校内で学ぶ節度ある集団生活のことわりに絶対的な価値を見いださないわけにはいかず、
一般的な領域を超えて学識を高める行為は称揚を受けるにふさわしく、
学んだ事柄が有機的に結合されより高次の体系的知識へと変じるのはある種の奇跡であり、
そして現状オーラル・コミュニケーションはただリスニング対策にかまけるだけの無価値な屑である。
……そう思っていう人間はたまにいる。
04 イマ ーーChapter 逃避行
忍は絆だけが世のあらゆる摂理から神聖不可侵に反故されるなどとは、微塵も思わない。
努力を失えば、たちまちのうちに形を失い、無価値な砂塵となって霧散する。
そんな代物であると理解している。
世に称揚される愛。
人々はあまりにも無条件に信奉してしまう。
その怖さや冷たさや無常の様を、見もせずに。
情愛は守らねばならぬ。
それを尊いと自覚し、聖別し、奉る必要がある。
05 あずさ ーーChapter 変質
失って、無意味になって、わからなくなる
みんなが生きた事実は残るって言うけど
……その事実だって、いつかどんな記録からも消えてしまう
無意味でいいんだと思う
終わってしまったあとは無意味でいいんだと思う
それがある今のうちに、あたしたちはーーー
今をーーー
あたしが、終わりまで見守るから!
あたしが最後になる!みんなが寂しくないように……
消える時に、無意味になる時に、そばについてる!
だから、だから
終わったなんて、思わないでーーー
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葉子ルート1
01 イマ ーーChapter 葉子との出会い
左右の道は等しかった。
自由も束縛も等価値だった。
孤と群も差はなかった。
個人の主観を入れなければ、苦しみはない。
運命に限らず、何かに支配されることは自然なことだ。
どの個体も全宇宙に等しくはないのだからーーー
含有される存在は全て、何かの下位に位置する。
外圧や倫理や規則や運命や使命に、操られている。
02 イマ ーーChapter 葉子との出会い
各人の心が聖域化していく。
だが一人は寂しい。
メッセージを投げかけねばならない。
出来うるならば高密度に凝縮された自意識を持って、他者を衝撃・影響を与えたい。
発信型メディアーーーネットワークが十全な環境を与えた。
03 イマ ーーChapter 葉子との出会い
心の垣根が低くなっていくさ錯覚さえあった。
低くなって、低くなって、足首ほどにも下がって。
それは液状のイメージど化した。
水たまりに、素肌を隠すことのない忍と葉子が立っている。
言葉はいらない。
水のようなものが意志を伝えてくれる。
いや、伝えるという言葉さえ適切ではない。
壁が取り払われ、自我を共有しているのだ。これは。
境目がなくなれば人は世界を重なる。
時間感覚の消滅。
濃密な、そして曖昧な瞬間が持続する。
04 イマ ーーChapter 葉子と歩く道・後編
忍は唐突に、千金にも値する価値を実感した。
今という瞬間。
胸が優しく搾られる。
甘えにも似た感情。
涙が出そうななほど貴い。
肺腑からもぎとられた一房の吐息。
音もなく大地に吸い取られた。
05 イマ ーーChapter 放課後の可能性
街には人が大勢いる。
商店街などで見られる主婦や老人・子供の姿はなくなり、カップルや若者の集団が目立つ。
人々はいかにも楽しげに練り歩くが、彼らの姿は皮膜がかかったようにぼやけている。
他人事が群れをなしているように見えるのだ。
それは街の人々が、生活から切り離された姿であるが故だろう。
着飾り実態を隠した、没個性化した群衆。
本来のものではない虚像が、見る者に薄皮をもたらす。
形容として不自然といえば一言だが、人の資質について語る時、簡略化が過ぎれば本質を喪失する。
無論彼らにも、生活に面したそれぞれの個があるはずだ。
虚飾などではない人なのだ。
しかし画一的に塗り込められた本質は、装飾を貫き通すものではない。
彼らを映像だと言われても、戸惑うことはないような。
06 イマ ーーChapter 放課後の可能性
明るい未来社会。
そんなものを、必要以上に眩く知らしめたのは高度成長だ。
あまりにも輝かしいビジョンは至高のものであり、信仰と化して人の心に忍び入った。
未来はいつから途切れ、霞んでしたったのか。
忍は知らない。
彼が生まれた時には、とうに未来などなくなってしまっていた。
若者にとって生きるとは、永続する圧迫にさらされることだ。
時間は未来に進んでいく。
希望とともに進んでいく。という幻想を連れて。
だが希望は薄れた。
若者の目に人生は、体験する前に終わってしまった行為に等しい。
未来の結末がわかりきったものである時、では現在今とはなんだろうか?
それは回想にも等しいものなのかも知れない。
思い出にはソフトフォーカスがかかる。
このイメージは万民に共有されるはずだ。
忍が見ている光景で、人々の様が煙るのは、そんな理由もあるのだろう。
章二はこう示唆している。
人は一人で生きる力を持つしかないーーー
07 イマ ーーChapter 葉子に触れる-続き
根元的な性欲は、相手への密着を要求するものである。
神経の詰まった感覚器官でつつくだけでは、それは満たされない。
接触。密着。
人は一つになりたいのか。否である。
他者を感じたいが故にそれを渇望するのである。
誰かと融合したいと考える者はむしろ少数だ。
自己を保持したまま、他者を感受する。
表層と下層、二つの領域を持つ人類は……そういう心の機構を構築しなければ、とうてい他者の暗部を認めることはできない。
08 イマ ーーChapter 忍、刺される
理由を設定した時、人は心のかたちを規定する。
正常な機能、その全体を構成する微細なパーツが、再び諸世界の海から入れ子式に結びつく。
なぜ寒いのか?
血が抜けているからだ。
既知情報。
どのような理由でその状況に至ったか?
記憶が映像とともに甦る。
それは確かに、事実であると思えた。
09 イマ ーーChapter 葉子待機-2
世界は灰色。
苦痛は永遠に引き伸ばされる。
麻痺してしまえば楽になる。
最初から愉悦を知らなければ楽になる。
そのための保身が、無知である。
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IMA:category2
―――彼はいつも独りだった。
わずかな時さえ惜しみ、施設を抜け出しては空を見上げた。
世界から忘れ去られようとする、今この時に。
殺風景で命あるものの息吹を感じられないこの空間で
永久とも思える孤独を強制される毎日に
絶望すら忘れた。
過去の栄華に思いを馳せたところで……
彼の胸を、打つものはない。
その他の者たちは、しかし異なった所感を抱く。
忘却されめよう築き上げた世界で、狭き領土を巡り争う。
老いたものを、若者が受け継ぐ。
世界が連綿と繰り返してきた摂理をなぞり
若者たちは敵得た。
安息の場所などいらぬと、ただひだすらに刃を研ぎ。
誰かの《聖域》を破壊してもなお、振るい続けた。
……世界は偽りと裏切りで満ちている。
人と人は傷つけ合う。
どんなに親密でも衝突は避けられない。
だからこそ。
人は争いを捨てられぬのだと。
相手を傷つけるにとしか出来ぬのだと。
誰あろう優しさを求め抜いた彼こそが
涙と共に知るのだと……
千々に引き裂かれた心のピース。
どうか、優しく配列されますように―――
Forever long. No matter how far is.
For the somebody one... For the one that will meet someday.
At the place that I can see nothing. But, the memory.
The script meaningless.
But the technique.
He's Aulelius, the King, King of mankind and breaks the barrier of species.
人々の間で繰り広げられる理解と共感、反発と衝突。
そして、傷つけ合い、殺し合い。
獣欲の求むるままの、破壊。
そんな辛いだけの世界に、未練はない―――そう、思っていたのに。
Aware of "that" will change the world surrounding us.
Will reach to the new world, will arrive to the "sanctury".
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あずさルート2
01 邑西 ーーBlog 一日外出権
少年たちは外の世界を知る。
そして帰り、仲間にそのことを話す
彼らは秘密を共有し、その心に同質のごじ構成要素を共有する
全てが同じである必要はない。個性はあって良い。だがこうした、仲間意識とでも呼ぶべき資質を植え付けることには、意味がある
02 南 ーーChapter 南の勧誘
全てを持っているということは、何も持っていないのと同じだ
03 フランシス ーーBlog 好きは罪ですか?
この美しい名前を、私は美しいと習いました。
私は美しいものと認識し、愛しています
04 イマ ーーBlog どうせ逃げられやしない
忍のイメージにおいて、海は巨大な脳だった。
脳が頭蓋のうちで、脊髄液に浸かっている……ということを知ったからだ。
有機的に繋がった海には、無数のプランクトンが存在している。
その二つが重なる。
05 イマ ーーBlog ちっくたっくちっくたっく
人は人を改良する。
いろいろなツールを用いる。
怒声・体罰・ルール・決まり・優しさ・ぬくもり・食物・玩具……倫理―――
放置された赤子はせいぜい獣にしかならない。
人はその設計思想に、改良を含んだ命だ。
06 イマ ーーChapter 探し回る忍
あなたが納得するまで同じ日々を繰り返したなら、きっと辿り着ける
だから、待ってる
わたしが消えてしまう前に
迷宮の先で―――
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沙也加ルート2
01 イマ ーーChapter 宗多との出会い
子供らは喜怒哀楽に感情移入しやすい。
抑制のきかない精神は踏みとどまることができない。
閉鎖的な集団内では、大枠を外れたローカルルールが発達するものだ。
その中では一つの巨大な善悪が定められ、固着する。認知的な不協和を避けるため、正当化は著しい。
イジメられる側に問題がある。
この論理は、彼らの良心の呵責を麻痺させる機能を持つ。
02 イマ ーーChapter 宗多との出会い
人間は生理的に人を嫌うことがてきる。
どす黒いものが胸裡をよぎる。
そう、生理的嫌悪感だ。
生理的嫌悪感をこれほど発達させた動物が、他にいるものか。
本質なく人を拒絶するシステムだ、それは。
03 忍 ーーChapter 皆殺しの狩り・3
すべてに意味を求めて、正解が見つかって……
それが不本意なものであったら。それか、見つけた意味にさらに意味を見いだそうとして、自分の価値さえ見えなくなったら
無でいいということになってしまわない?
04 忍 ーーChapter 皆殺しの狩り・3
積極的に死にたいのなら、どうしようもない。死ねばいい
……生きることも死ぬことも変わりないなら、頭から順番に試していくのが普通だよ。機械なら
05 沙也加 ーーChapter 皆殺しの狩り・3
どこに向かったらいいのか、わからない……
自分が何者で、何をするべきなのか、わからない……
あの子たちを大切にしてはみたけれど……
死んで……失っても……
悲しみもなく、乾くだけだった!
こんなの、人間じゃない
人間じゃないなら……じゃあ、
どうして、人の形をしているのか……
この涙が、悲しみの涙なら良かったのに
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笛子ルート2
01 イマ ーーBlog 予知
古典物理学におけるラプラスの魔とは、世界全ての原子位置と運動量を知り、瞬時にそれを演算できる絶対的な架空存在である。
ラプラスの魔はその絶対的な演算の結果として、
全ての未来を知ることになる。
しかしこの概念は、不確実性原理によって決して成立しないとされ、幾多の超常能力を擬似的に再現してきた派生現象学上においても存在はほぼ否定されている。
1と0上に全ての世界が乗っている。
しかし1と0は、その予期される性質以上の複雑さを発揮し、決して先を見通せない仕組みをもたらした。
趨勢は予知できない。
だが人の営みにおいては、目前に垂れ込める暗雲だけが重要なのであり、思考実験による悪魔の否定など何の慰めにもならない。
依然として―――神はサイコロを振ろうとはしないのである。
02 忍 ーーChapter 笛子の挙動
一人で古代の寒さと暗さと空腹の中に置かれたら、尊厳なんてあったものじゃないんだろうな
守るものがないと……あるいはそれは家族だったり倫理だったりして、そういうものがないと……心の強さ発揮する場所がないんだから
人間には、他人が必要なんだ。その善し悪しを別として
03 忍 ーーChapter 笛子の挙動
もし僕らの輪が砕け散ってしまうとしても、今までの楽しかったことを忘れないようにしようよ
そこには最善の今があったんだって力強く思うんだ
ただ時間の果てに置かれだけの、むごたらしい結末よりも、価値があると信じよう
最後の瞬間によって、それまで歩んだ道筋を評価することをやめよう
結果論を捨てる。いずれ残酷な時間に立ち向かうには、それしかないんだから
僕は希望を持てとは言わない
明るい未来を信じて、賭けろなんて言えない
祈る神さまもいやしない
僕たちは一人なんだ、笛子
04 笛子妹 ーーChapter 笛子の挙動
……最期に逃げこめる場所があるっていいものよ。人は尊厳を捨てたあとも生きていかないといけないものだから
05 イマ ーーChapter メモ・心を乱した者たちについて
誰もが差別意識を持つ時代である。
優劣を競い、知的増税に随伴し損ねた者を攻撃し、一般性を殺傷し、相互憎悪の構図を描き上げていく。
ネットワーク。網の目。即ち、
近代社会と呼ばれる、負と憎悪の網―――
社会は必ずしも善に守られてはいないことを認めざるを得ない。
信頼を放棄しなければならない。
疑心に陥らねばならない。
我が身と家族を守るため。
精神の驕慢さを守るため。
06 忍&あずさ ーーChapter 笛子を想って
信仰には理屈がない。相手がどうあっても異存してしまおうという……そういうずるさが見える
信頼には覚悟がない。相手が裏切ったら信頼というものは壊れてしまうから。
でも、信じちゃいけないということはない。
07 イマ ーーChapter 白紙委任
かつて国と人を繋がりが重い時代があった。
家族が大切だった時代があった。
互い報い会う結束が、何よりも素晴らしいと断定できた時代があった。
そして今、ひとりひとりが自らの領土を手に入れるようになると……それらの繋がり方は次第に外縁に遠ざけられるようになった。
行きすぎた友情は侵略と変わりない。
そう叫ばれるようになったからだ。
どこからが侵害で、どこからが絆なのか、判断基準は明らかにはされない。
自分以外の誰にもわからない。
人が育てた最初の虚無の花は核だが、次に栽培することになったのは自殺の権利である。
その萌芽は豊かに狂える世代を土壌として確かに生まれ始めていた。
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葉子ルート2
01 葉子 ーーChapter 殺人事件の噂
つい最近まで、世界はおかしかったんですよ。ううん、今もまんべんなくおかしい。ほんの十年前、二十年前もおかしい。そもそも
世界がまともでいた瞬間が、人が地に満ちて以降、果たして一秒たりとてあったのかどうか―――
02 葉子 ーーChapter 殺人事件の噂
日々の生活の中でも、ささいな行き違いはいくらでもある
被害がなければ、性格のすれ違いで済んでしまうことですけどね
個性も"狂い"には違いないわけで
03 葉子 ーーChapter 殺人事件の噂
悪行は罪です。自覚ある悪行は潔いですが罪です
しかしもっとも危険なのは、自覚のない善行です
革命の論理ですから……自分のしている行為がどのような結果を招き、誰をどれだけ傷つけようとも、欺瞞による自己正当化が起こります
正しいからやってよい。その感覚を持ってしまうと、どんな残酷なこともできてしまいます
でもそれは本当ならば、罪の苛烈さをともなう茨の道
心の痛みを代償に支払い続ける必要があるんです
背負えるだけの罪より大きく、人を救おうとするのは危険なんです
04 イマ ーーChapter 斎の相談
国家的報復は、私怨とは似ているようで、異質なものに思える。
意志集合体である国家の判断は、時に意固地に少年のような、無理を通そうとする。
05 イマ ーーChapter 葉子のご相談
普通に生きていれば、様々なことで汚れ純度を失っていく心。
妖精さえも見通す無垢な貴石も、20年を過ぎる頃には傷で濁った石塊。
現世を生きるには、それで良い。
どうせ汚れる人生なのだ。
繊細さはいらない。
06 葉子 ーーChapter メイドご奉仕
本当のお日様だって、きっとそうなんです
自分のために光って、そしてついでに何かを温めている
忍さんの意志は関係ない。私たちが、勝手に好きなだけ
07 斎 ーーChapter 真実
……言っていた
忍様は、言っていた
輝かしい希望など、過去にしかないと
未来には苦しみしかなかった、と。まるで見てきたように
それでも、生きねばならん―――人は
何者かの犬にならずとも、あなたの宿願は果たされただろう
たとえ不利であろうとも、一からの出直しになろうとも、純粋な思いがあるのなら、誰に頼ることもなく切り開くべきだった
しかしあなたは古い時代の体現者たろうとした
望んで挑み、そして敗れ、ついには腐れた
哀しいかなそれが現実であり、苦しみしかない未来の一端だった
あなたは見落とした。戦国はあなただけに優しくはなかった。身も凍るような絶望というのは、そういうことも含むものだからだ
お悔やみ申し上げる
……そして俺は、門倉の末期を看取る者になろう
塚本斎の名において、覇者の血没する、墓所までの供として
----- 503 Service Unavailable -----
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IMA:category5
―――21世紀
人類ははじめて「敵」を認識した。
それは
同じ人類や星の同胞などとは比べものにならないレベルの超越的存在。
これまでの人類の戦争の歴史など
じゃれあいとしか呼べるものではなかった。
空前絶後のそれに対して、人々はあらゆる手段を講じはじめる。
その先鋭となるのが、あらゆる「現象」を操ることのできる
能力者(USER)を生み出した「群像委員会」であった。
しかし、一時期を全世界規模まで膨れあがった委員会は
その巨大さゆえに内部崩壊していく。
人類は、人類以外の敵を前にしてもなお
人類同士での争いをやめようとはしなかったのである。
そして人々は、世界最高の現象行使能力を持たされた少年に希望を託した。
しかしそれが、少年にとっての希望であったわけではない。
しかしそれでも、少年は、戦う道を選ばざるをえなかった。
すべての希望を失っでも、
敵対していた、憎みさえしていたUSERたちを従え、
およそ人の及びうるものではない「敵」に対して
幸せだった頃の記憶だけを胸に―――
Forever long. No matter how far is.
For the somebody one... For the one that will meet someday.
At the place that I can see nothing. But, the memory.
The script meaningless.
But the technique.
He's Aulelius, the King, King of mankind and breaks the barrier of species.
戦争の果てに待つものは―――
哀れなる「敵」と「人類」の得られたものは―――
少年が最後に辿り着いたのは―――
少女に導かれた―――そこは、最果て。
Aware of "that" will change the world surrounding us.
Will reach to the new world, will arrive to the "sanctury".
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戦争編
01 イマ ーーChapter 過酷な時-0
人の世に神はなく。
神なき世界に奇跡なし。
奇跡なき世に救いはない。
あるものは、わずかばかりの砂金にも似たような希望だけ。
02 イマ ーーBlog GVP
カナダの学者、M・マクルーハン、その著書を中心として広範なメディア論を展開した。
狂騒的な人物であるとされたマクルーハンであり、その知的業績全てに対する理非は置くとしても、活字に続くテレビ・ラジオなどの媒体が登場したことで、人の感覚機能を拡張され変容してきた……とする言説は、まず適切と言って良い。
さらにはインターネットなどの、極度に電子的メディアが地球全体を覆うことにより、地球全体が一つの共同体へと変質・統合されることをも指摘していた。
これはグルーバル・ビレッジと呼ばれる。
だが実際のところ、人類は最後まで、国家としての対面と対立の渦中に置かれた。
インターネットによる一体感は確かに存在したと言えるが、国家・民族・思想・宗教といった領域性を解体するには至らなかった。
インターネットは接続者全員に地球環境規模の可能性を与えたが、受信側の可能性は有限であり、結果構築されるのは、極めて近視眼的な共同体の群れであった。
これら新たなコミュニティは、地理上の制約からは解放されるが、依然として言語的制約に囚われる。地球上の言語は統一されておらず、おのずとその境界線は既存の国境とも重複する。
大きな発展性を有しはするが、国家を解体するパワーに乏しいインターネットは、合一すべき楽園を提供するには至らなかった。
仮に『グルーバル・ビレッジ』がネット上に誕生しえたとしても、それは数限りなく存在する対立の垣根を取り払うため、全ての問題を同一線上で扱わねばならない危険性を持つ。
高度に複雑化し、正義というものが無意味化された諸思想の混沌においては、人間の互いに対する許容量の欠如が大きな問題となって立ち現れる。
問題は解決しない。
希望との距離は縮まらない。
ネットをもってしても、である。
またネット上の各コミュニティは、集団成極化現象により中庸が排除され、いびつな集団へと形成されることも多く……相互の親和性はますます失われていく傾向が見られた。
21世紀における人類の版図は、言語的制約に束縛されない範囲での、地域地盤を必要としない程度の可能性を持つだけの、無数の共同体という形に結果された。
この現象は『再結合』もしくは
『Transition of the shape of spots (斑状の推移)』 と呼ばれる。
思想により帰属集団を再決定できるという選択肢は与えられたものの、人間の根本的な問題解決の一助とはならないものがインターネットであった。
これはある意味、人類感覚のバージョンアップとも言えるものであり、期待された楽天的未来像に繋がる道ではなかった。
もしろ、似通った思考の持ち主が集まることで、極端な意見が抑制されず、集団間の対立はさらに助長されるとも考えられた。
このように、インターネットは人類にマイナーチェンジをもたらすに留まったが、世界規模の問題に対処すべく、新たなパラダイム・シフトが必要とされ続けるだろう。
03 ジーン ーーChapter 施設での日々・2
平気も何もわからんのでしょうに。洗脳が認識できない心は、自分自身と変わりないよ
04 イマ ーーChapter 施設での日々・3
知性とは、不思議な現象である。
文字と数式を印刷した紙切れが、ただ視野に入るだけで、人は脳機能を増強できる。
その果てにあるものに、忍は興味がある。推論している。
知性の結末というものに。
05 イマ ーーBlog 睡眠
平常時、人の心がどこに宿っているかは判明していない。
心が存在している物的証拠もなく、精神活動を統合する人格が宿る部位も発見されていない。
だが人格は、無数に存在する脳機能を統合するかのように存在する。
06 (忍)&イマ ーーChapter 心海
貴宮忍最深領域に秘められていたもの……それは、
(これを手にした瞬間、僕の死が決まる)
(下手をすれば、最後の日まで保たない……それほどの負担を背負う)
(だからなのかな。僕の予見が、未来を映せないは)
(こうなることは、決まっていたのかも……悔しいけれど)
(でも、やるね……章二)
(全て、僕のものにしてしまうよ)
(奴らに消費されてしまうくらいなら)
(僕のものに―――)
(在り日に世界征服を嘯いた、愚かな君に敬意を表し)
(世界を、君の好み求めた聖域に、組み替える)
(敵に一太刀)
そのためには?
対神対識高次病原概念『CODE-T』―――
07 忍&イマ ーーChapter 心海
手を伸ばす。
カードを掴む。
そしてはじめて、命令文を発した。
「Omnipoten Network Management Protocol」
世界の王たちが目指した境地、人類統一の確約とともに、
貴宮忍、起動―――
08 イマ ーーChapter 過酷な時
過酷な時が来ようとしていた。
だがそれさえも、終末に比べれば、許し得るものと言えた。
結末の世界では、人類史におけるどのような犯罪行為も許される。
悪逆非道な行いも、演じられるべき舞台が消失してしまうのであれば、無である。
今の苦しみ、そして如何なる犠牲も……過程に過ぎない。
だから確定された破局対し、人はどのような非人道的手段をも講じることができた。
犠牲が出ることがわかっている作戦。
それに従事……否、主導するとい立場の忍だ。
王の王たる責務として。
期待されるのは、奇跡でしかない。
犠牲のない、完全無欠の勝利だ。
勝てば……また人は、終わらない楽園に身を置けるのだから。
人同士の、他愛ない営為に耽ることができる。
殺すこと、盗むこと、欺くこと、犯すこと。
なべて幸多きことだと言えた。
残念ながら、人は神ではなかった。
人の世に神はなく
神なき世界に奇跡なし。
人類が絞り出したのは、大多数の犠牲をもって、ごく少数を生存させる方法だった。
他に手はない。
現象に触れ、事象を成して、到達すべきに人造奇跡。
そのためのUSERであり、GVPであり、貴宮忍であった。
09 南 ーーChapter 動乱前・2
倫理は、生き残ってから考えればいいことだ。違うか?
10 南 ーーChapter 動乱前・2
自分がここにいることを、確かめたい。そのためだったら何でもする。それは相田も、ジーンも変わりはない。俺たちの誰もが、存在意味を求めている
おまえがそれをくれるというなら、俺たちの中に文句を吐く者などいない
おまえが、王になってくれるというなら―――
11 忍 ーーChapter 革命
聖域は不可侵なんだ。大切だから聖域なんだ。だけど……せっかく一人一人孤立している人間なのに、一つにならないといけないなんて、悲しいね
12 千鳥&忍&イマ ーーChapter 革命
雛が親鳥を見るように。
生まれなおしたばかりの忍は、姉と呼べる者を見た。
千鳥 「……忍!」
そっと抱きしめる。
できたばかりの頭が、潰れてしまわないように。
忍 「姉さん……」
眼球再生の過程で生じた汚水は、大量の涙液によって稀釈され体外に排出。
機械的に流れる廃涙は、しかし懐かしい匂いに抱きしめられて、次第にその純度を高めていった。
そんな気が、忍はしたのだ―――
13 灰野 ーーBlog 最後の日
正しい行為などない。あるのは、人に都合の良い概念だけだ。人は概念によって駆動するのだから
14 イマ ーーChapter 新たな日へ
同意なき干渉は罪である。
ゆえに全ての親は罪人である。
子を教育するからだ。
子を教育しない者は外道であり、やはり罪人だ。
自己矛盾から人は逃れることはできない。
もっとも正しき行いは、孤立することである。
鋭く、貴く、厳しく、甘く。
部屋に籠もる者こそ、圧倒的に正しい。
なぜなら誰にも直接的影響を与えないからだ。
心を共有することは、少人数に限り成立するだろう。
人類は一つにはならない。メディアの力をもってしても。
無数の聖域が在るばかり。
結束がないそれらは、弱い。
未成熟で、青く、幼く、たおやかな生命相。
現段階における人類の限界点でもある。
15 忍 ーーChapter 新たな日へ
人は狭いよ。何も許しはしないさ。合一もできない。ただ共感して共有するだけだ。それだって、世界規模では起こらない。相反しているからだ
人種、理念、言葉、印象……ありとあらゆる場所に、反目の種があるんだ
たまたま人類全てが互いに許し合えるなんて、どれだけ時を重ねても起こりえない。確率の上ではあるかも知れない。けど、それこそ絵空事だ
たまたま全人類が互いを全肯定できる瞬間なんてのはね、宇宙と同じ広さの空間を飛ぶ二匹の蜂がさ、衝突するのと同じくらい起こりえないことだよ
だけど、それを否定しているんじゃない
ただ、人はそういう性質のものだって、わかるんだよ
99%の孤独と1%の共感で、生きていくものなんだ
世界はさ、俗人の愚かしいうねりで動いていくんじゃないか
一部の天才だけが世界を動かしている……なんて迷信を、君まで信じているわけじゃないだろ?
16 南 ーーChapter 新たな日へ
俺はおまえを守る。同じ人類の、未熟さ全てから
権力も、毒殺も、狙撃も、不慮の事故も、近づけさせない
任務だからそうするんじゃない。俺がすべきだと思うから、そうする
責任が重いのであれば、皆で背負おう
青木ヶ原ならびに軍艦島出身のUSER、南レイ以下残存17名、ユニット・アウレリウス/貴宮忍の指揮下に入ります
17 イマ ーーChapter 新たな日へ
そこにもまた、小さな共有があった。
軽く表層をかすめただけの、小さな共感だ。
深層の相互理解とはほど遠い。
なのに、なぜ人は、そこに価値を見いだすのだろう?
懸命に、見いだそうとするのだろう?
愚かで矮小な肯定。
だが忍には、今の忍には、痛いほどよく理解できた。
18 南 ーーChapter 協力者を求めて
現実はどんな美しい倫理さえも突き崩す。まさにな
人を殺すべきではない……人を殺す必要がある局面など、掃いて捨てる程ある
盗んではならない……警察が容疑者の所持品を接収することは、例外とされているだけで奪い取る行為には違いない
定義の幅を人間から外せば、世界は強奪で満ちている
欺いてはならない……欺きは国家群を維持する価値基準だ
倫理というものは、人のためのものであるから……地球規模で矛盾があるのはいい。要するに人に都合の良い価値観なんだからな
ただ……それこそ滅亡が目前に迫れば、倫理は薄まるものだ。無理強いだって許されてしまう。そうしなければ……滅びるだけだからな
人がいなくなれば、倫理さえ維持できなくなる。倫理の行使者がいないのだから当然だ。だから倫理を保持するために、倫理を裏切ることもある
自己矛盾だな。俺はよく、倫理の意義について考えたよ
19 忍&南 ーーChapter 協力者を求めて
忍「……倫理には、意義はあると思う。人が人らしく生きるため、人が人らしく思える倫理を用意したんだからね」
南「だが、決して堅持はされはしない」
20 忍 ーーChapter 協力者を求めて
美しい絵を見て感動するのと一緒でさ、倫理を守ろうとして抗う様子を……僕は攻撃できない
要するにどこに感情移入するかって部分なんだ
僕は罪のない人を殺すことには抵抗がある。今現在、そういう設定になってる。だから魔女狩りの倫理は好きじゃない
でも意見を人に押し付ける行為に立ち向かうことには、美的なものを感じるよ
21 イマ ーーChapter A級の味方
嫌と言うほど、悩んだことだ。
悩んだ末に、決めたのだ。
揺らぐまい、と思う。
動じまい、と思う。
心を凍てつかせるのではなく、背負う全てを認めようと誓う。
今後忍が殺し、傷つけ、奪うすべての者たちに。捧げる身は一つしかない。
償うなど、できはしない。
罪は罪としてそこにあり、打ち消せ改竄されないのだから。
世界に、歷史に刻まれた情報は、改竄されないのだから。
罪深き者が処刑される様を、人が『償われた』と定義づけるしかない。
あらゆる規範の中で人は生きる。
人の枠を外れることはない。
罪だからだ。
法と倫理は、人の善なる総意によって導かれる。
だから人が変われば、倫理も塗り替えられるはずだろう。
22 イマ ーーChapter A級の味方
動き出す。
人類は駆動する。
空に押し潰されるだけの存在が、自らの内部に活路を見いだし、財産を賭ける。
たとえ全てを失ったとしても、人の形で生き残る。
人権を投棄される。
倫理はうち捨てられる。
自由も忘れ去られる。
そうまでして生き残ったとしても、かつての人としての日々はない。
望んで進む道筋ではない。
そうしなければ生き残れないからだ。
ある意味、進化には違いない。
人為的な変化を進化と呼ぶのなら―――
結果、人は形だけを残す。
そう決めた。
空は融ける。
じき、融ける。
濁って、うねり、大地を犯す。
人を呑み込む高波に、最果てまで逃げ場はないように思う。
事実それは、物理の地平を超えてくる。
心が失われる時が、近づいている。
23 フランシス ーーChapter 隔離された記録・2
たとえ人が滅びても、わかたれた愛情の価値は減じない!注ぐ機会を惜しみ、喪失することこそ罪なのです!!
24 イマ ーーChapter 姉弟
歪な泣顔に、人間味はない。
もしかすると千鳥は、努力して泣いているだけなのかも知れない。
それは、せいいっぱいの、ヒトだ。
千鳥の演じるヒト。
無機的な人間像。
25 (忍)&イマ ーーChapter 姉弟
人間は捨てたものではなかった。
理解が遅れたけれど、ようやく確認できた。
聖域の外にも、無数の聖域がある。
無数の聖域が集まって、大きな界をなしている。
それこそ世界だ。
今までの世界である。
抵抗力のない弱い群れではあるが、
闇雲に他者に罪を背負わせるシステムではあるが、
交換の仕組みに過ぎないものではあるが、
(好きになれそうな気がするよ、みんな)
好きであれば、殺せると思う。
好きだからこそ、奪えると思う。
見ず知らずの誰かに対し、背負う罪悪は苦しいものだ。
だが今、責任をもって、命を預かることができそうだった。
返せる見込みはない。
忍は心いっぱいの賛辞を、滅びる者たちに捧げた。
よくできました―――
さようなら、人類―――
26 イマ ーーChapter 落日 ※Blog 交換
人間社会はある種の交換システムである。
人が密集する意図は交換にある。
交換が社会を社会たらしめている。
27 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
創発とは、単純な要素の相互作用から、より複雑な上位の全体機能が発生する例……わかりやすいところでは、例えば迷子のアリを連想してみると良い
迷ったアリは単体では、その状況を打開できない
だが仲間が餌場を発見し、フェロモンを誘発することで合流作用が発生し、行列によって餌を巣に運ぶという上位行動が立ち現れる
こうした上位の行動は、末端を見ても予測も説明もつかない
個々のアリはフェロモンを発生させる機構はあっても、行列を作るという命令はインプットされていないのだ
アリは行列を作ることを知らないと言える
なのに行列は形成される。必ず
下位要素の結合により、より上位の秩序が形作られる。だというのに個々の端末には、上位現象についての意識はおろか自覚指示部位も存在しない
原子はあらゆる物体を構成する
当然、あらゆる物体の機能や性質を示す特質が、原子にはなくてはならない。だがそのようなものは明確には把握できない
集まることで、それはやっと観測できるのだ
固は集合することでまったく別の性質を獲得する、と言った方がよいだろう
アリについても実際に起こったものを見て、我々は後講釈で解析しているに過ぎない……それができないものも多い
28 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
魂の座は、脳であると誰もが思うだろう。それは核心に近い推測だが、医学的に見て脳のどこかに、人間の意識を司る部分は存在しないのだ
つまり意識とは現状、錯覚としてしか定義できない
29 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
私はクオリアについて語っているのだ。では赤いという詩的な思いは、どの神経の発火によってもたらされたのかわかるかね?
認識までは物理的に成立するだろう。それがどこから感覚へと化けるのか
認識の副産物として心があるのか。おそらくは、これが正解に近い
心を生み出す装置がない以上、神経の因果関係によって意識は説明されねばならない
30 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
群体は我々の認識を越えた存在だ。彼らはもしかすると、存在していないかも知れない。心のように
科学の上に立つ人類にとって、自己とは幻想と断定するしかないわけだな
そして我々は、はるか高みにいる、上位幻想に侵略されようとしている―――
31 イマ ーーChapter 人類結合
虚人たちの群れが、人間社会の終幕となる。
心のない社会。
交換のない社会。
アウレリウスとして、喜怒哀楽を知らずに育てられた忍は、だが学んだ。
悩み触れあう人の、心地よさ。
機械のような人間だと自身を定義づけていた。
そんなことはなかった。
忍もまた、人だった。
哀れで愚かで尊いものだった。
32 イマ ーーChapter 人類結合
選択肢はなかった。
一つもなかった。
可能性の分岐はなかった。
パラレル・ワールドは否定されていた。
ならばこれは、一繋がりの物語。
記事である。
更新され、史実に一歩遅れて記録されている。
治療には、追憶が求められた。
いや、治療過程そのものがまさに追想だったのだ。
整列。
ないしは、配列。
よって、それは予知ではない。
33 イマ ーーChapter 人類結合
ヒトに芽生えた神を埋葬するに相応しい偉容。
聖なる一撃によって、無知なる神は知るのだ。
自分以外の誰かが、存在したことを。
慰められるに違いない。
孤独の神に捧ぐ物語。
絶無に行き着く苦痛と悲しみ、神を知り涙する者の存在を感受しながら、消えることができますように。
34 イマ ーーChapter イマ
安心なさい。人類は孤独ではない
いつも苦痛の悲鳴をあげている、あなたの末梢神経たちにも、そう言ってやんなさい
彼らはもしかすると、孤独に泣いているのかも知れないのだから
35 イマ ーーChapter イマ
あなたが大切だと思えた。他者を、愛せた
他者を意識することで芽生えるのが社会性なら、
私はそれでやっと孤独から解放されたことになる
ならば、人間らしい生き様を
胸を張ってヒトと名乗れる営みを!
36 忍 ーーChapter イマ
ヒトは短い寿命を生きる。だから今は全てではあるけれど、それは明日のためでもある
明日を夢見て生きるものが、ヒトなんだと思う
37 忍 ーーChapter イマ
個々の原子があつまり、
神経が形作られ、
神経が集まり、
機能を備え、
無数の機能はまた、意識へと昇華していく。
さらに、先がある。
38 忍 ーーChapter イマ
世界は俺に、日常に戻って良いと告げたのだ。
こんなに嬉しいことはない。
絶対の幸せのうちに、
ログアウト―――
ーーーーーーーーーーーー
「あの頃の僕等に」
手のひらに信じるもの全て
つかんでたあの頃
押し花を大事に持ってた
でももう捨ててしまった
喜びや悲しみ抱え
僕達は何処へ行く
夢でした 変わらずにいること
人は何を探しはじめる
笑ってたあの頃に僕らに
戻れないけれど
あのときの恐れぬ強さを
今頃欲しい気がする
過ぎ去らば どんな夢でも
忘れゆく 消えてゆく
見渡せば 誰もいなくなった
子供たちの声が響いた
喜びや悲しみ抱え
僕達は何処へ行く
夢でした 変わらずにいること
人は何を探しはじめる
てのひらに信じるもの全て
もう一度 つかんでみよう
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エピローグ
01 忍 ーーChapter お茶会-2
人は群れることで深化した。
我々は人の気持ちを推し量る。
読心することで、人と人の距離を維持しようとする機能がある。
これは社会的複雑性の読解力と言われる。
相手を理解することで、共存が成立するのである。
その中からルールが生まれ、倫理が育った。
単純には、隣人を憶測する能力のことだ。
02 忍 ーーChapter お茶会-2
虚無の花枯れたあとの世に。
憤懣がきざしてきた。
こらえようのない感情だ。
叫びたい。
わめきたい。
歩きたい。
赤子が、泣き叫びながら外界にはいでてくるように。
03 忍 ーーChapter お茶会-2
ああ―――
戻ってきた。
僕の聖域に。
だから今だけは、自分の罪に感謝しよう。
この帰還に、感謝を。
もう一人の自分に、感謝を。
世界に、謝罪を。
そして僕は、秘められた園で、隠遁を約束する。
04 忍 ーーChapter エピローグ
沙也加は言った。
世界は無数の記録でできている、と。
模倣子以外の媒体が生じうる余地があるのだと。
僕はその考えを信じる。
今まで生まれ、死んだ全ての生命が、どこかに記録されているかも知れないのだ。
救われる考えだ。
05 忍 ーーChapter エピローグ
明日は、楽しみですか?
こちらは、今日も風が吹いてる。
きっと明日も、吹くと思う―――
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IMA:category1
a far song ~カナタノウタ~
あずさルート1
沙也加ルート1
笛子ルート1
葉子ルート1
IMA:category2
あずさルート2
沙也加ルート2
笛子ルート2
葉子ルート2
IMA:category5
戦争編
あの頃の僕等に
エピローグ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
IMA:category1
ーーーーーーーーーーーー
「a far song ~カナタノウタ~」
何も知らずに生きてた
何にも触れることもなく
すべて終わると知っていた
そして僕は解き放たれ
いびつな眩しいもの
それは美しい猛毒
壊れる世界の果てに見た
果たされぬ約束
深く遠く囁く声
遠き日の黄昏
ーーーーーーーーーーーー
―――彼らはいつも7人だった。
わずかな時さえ惜しみ、町外れの廃工場に集った。
忘れ去られ、錆と砂埃を胎に積もらせた直方体。
殺風景でありながらどこか情趣さえ漂うのは
かつて満ちていた人の息吹が乾燥し
空間に薄く哀愁を添えているせいだ。
過去の栄華に思いを馳せるように……
見る者の胸を、打つこともある。
若者たちは、しかし異なった所感を抱く。
忘却された世界を、所有者なき領土と受け止める。
老いたものを、若者が受け継ぐ。
世界が連綿と繰り返してきた摂理をなぞり、彼らはたまり場を得た。
家庭でも世間でもない安息の場所。
誰が《聖域》と呼んだ場所。
……世界は偽りと裏切りで満ちている。
人と人は傷つけ合う。どんなに親密でも衝突は避けられない。
しかし。
たとえ接触が傷つけあいだとしても、それは相手が実在することの証拠となる。
だからこそ生身の絆は、かけがえのないものとなるのだということを……
千々に撒かれたパズルのピース。
どうか、優しく配列されますように―――
Forever long. No matter how far is.
For the somebody one... For the one that will meet someday.
At the place that I can see nothing. But, the memory.
The script meaningless.
But the technique.
He's Aulelius, the King, King of mankind and breaks the barrier of species.
7人の間で繰り広げられる、理解と共感、反発と衝突。
そして、思春期の淡い恋愛感情。
永遠に続く友情。
そんなまどろみのような幸せの中に、ずっといられる―――はずだった。
Aware of "that" will change the world surrounding us.
Will reach to the new world, will arrive to the "sanctury".
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あずさルート1
01 イマ ーーChapter 工場への道
ここには人はいない。
一人で訪れれば、自らの存在さえ忘れてしまいかねない。
人は自身を直接見ることはできないからだ。
無人が浸透した背景は、自己性を曖昧に喪失させる。
人が人でなくなる道を越えた先、聖域は置かれている。
02 イマ ーーChapter 工場への道
ユートピア幻想はとうに過去のものだ。
崩壊し、残骸と化した。
瓦礫の骸に、自分たちだけの小さな、不完全な安息の地を求めるしかない。
それが現代という時代である。
だが忍は満足していた。
極限の楽園など知らない世代。
高度成長の末に訪れた、灰色の長き停滞。
停滞の中から生まれ出た彼らは、希望を体感することなく育った。
明るい未来。
結婚。出産。豊かな暮らし。
幸せな家庭―――
言葉としては理解できるが、印象としては幻想神話の類である。
03 イマ ーーChapter あずさとともにいる
現在を生きる少年たちに、与えられる希望はあるのだろうか。
高度成長期と呼ばれた時代、未来は輝いていたのだろう。
疑う余地もなかったろう。
しかし当の未来社会、21世紀現在はどうだろう。
どれほどの希望が残されていると言えるだろう。
年月が進むごとに、科学や数学などの物理が、夢の終わりを浮き彫りにしていった。
経済的繁栄はあったが、それは平地が少ない島国の汚れなき土地を、醜く祭り上げる幻像に過ぎなかった。
決定的な破局もなしに、ユートピア幻想は霧散した。
最初からそんなものありはしなかったのかも知れない。
そして無気力の時代に、若者たちは生まれた。
彼らにできる反抗は、耽溺と逃避のみだ。
歳経ることにより、ようやく第三の選択……リアルに生きることが見えてくる。
それは希望とはほど遠い、虚ろな生命維持。
充実も見返りもない日々だった。
疲れ果てたら、なすすべもない。
04 イマ ーーChapter とある夜
世界は限りなく広大であるため、個体が全てを知覚することは不可能だ。
人は進化し世界を広げた。
外界に視点を向け、無限の広がりをよいものとした。 地に満ちよ。
神は人の子にそう命じたと記される。
地を埋め尽くして、海に、空に、空の先に、無限に。
極限まで膨張することは破滅と同義だ。
だから広がるという行為は完全には肯定されるべきものではない。
世界が有限であるためだ。
どこかで、折り合いをつけなければならない。
人の文化が停滞したように。
そもそも個体の知覚できる範囲は、さらに限られたものである。
個にとって、人類の版図が拡大する意味は、今やほとんど失われている。
自分の居場所があれば良い。
だからこそ、衰退ははじまったのかも知れない。
辿り着くのは、聖域の個室化でしかない。
一人一人のエゴと合致する心地よい場所は、心のうちにしかないのだから。
05 笛子妹 ーーChapter 夢-1
ジコセキニンは他人にしか適用されないの。それが21世紀イズム。それが21世紀ドリームよ。
06 沙也加 ーーChapter 退屈日和
4000年前の蓮が咲くように、古い情報はいずれ花開くかも知れない。
情報は物質の状態だから、積層されていく。そしていつか誰かがそれを読む。
読まれ、理解された情報は浄化・再構築されてまた記録される。
リンクを残しながら―――
07 イマ ーーChapter 孤立
強者には権利以上に義務が求められる。
罪に先立つ悔恨が、そこにはある。
決断者として切り捨てる何かに対し、罪悪が発生することが確定されているためだ。
法はともかく、万民の倫理に一致する善は存在できない。
08 あずさ母 ーーChapter 母
右に行けば右に行ったことを叩く、左に行けば左に行ったと責める。まるで狂気の扇動者ね。
誰も責任を取るつもりはないくせに、人のすることには当然の権利とばかりにくちばしを突っ込みたがる。
彼らは敵が欲しいのね。味方を率いて、勇ましく立ち向かいたいのよ。闘争心を制御できないの。
だから積極的にそれを見つけ出そうとする。大きな戦いのうねりに乗っていたいのよ。
そうして彼らは、私たちのような攻撃しやすい社会的弱者を狙うのね。
滑稽だと思わない。まるで麻 薬だもの。社会的正義という気持ちよいうねりに乗りたい。そういうことでしょう。怒ることは心地よいものね、
他者を糾弾することは。
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沙也加ルート1
01 イマ ーーChapte 沙也加との出会い・2
戸惑いが表に出るタイプでもないため、ごく大人しい少年に見えるに過ぎない。
内面には、無垢といえば聞こえの良い、情緒の育ち損ねた虚無の穴がぽっかりと無数に空いている。
穴はあらゆる喜怒哀楽を底へと吸い込む。
人の有髄神経の軸索は髄鞘が形成されねば機能を果たすことはできない。
02 イマ ーーChapter 抱擁
絶対的な正義が曖昧になった現代である。
相反する概念に立たされる登場人物の葛藤とその結果は、いずれかを選択するものであることが多い。
それは明確な是非ではなく、左か右の選別とも似ている。
どちらも正しくまた誤りとされ、結果、全ての物語は“人を選ぶ”ものとなった。
人が生み出してきた無数の価値観は、時代とともに変化し、硬質化を迎えている。
たとえば勧善懲悪は否定されるが、その理由は単純だ。
誰にでも人権がある。
正当な手続きのない断罪が非―――感心できない、とされるのは当然なのだ。
子供にサンタクロースが存在するという教育は、人格を歪め侵害するものとして非難されるようになった。
未成年の人格を拡大する反面、虐待が増加していることも事実だ。
峻別には、理性的な社会基盤が必要となる。
忍には、今の社会がそれを備えているのかどうか、判断できない。
例えば自己責任の概念。
これは近年もっとも拡大したものの一つだろう。 ただしもっぱら、自業自得を正当な結果とするための演繹として機能する。
あらゆる行動は糾弾対象になりうるということだ。
行動するなら攻撃されることを覚悟すべきだ、という論調が社会に定着している。
行動は社会的制裁のため晒される可能性がある。
インターネットは事実関係ならびに個人発言を固定化する力があり、相互監視社会を塗り固めることを促進した。
実際の善悪よりも、多数派にとっての感情が優先され、正当化されることがある。
ただ法に背かないというだけでは、非難を免れることはできないのが近代だ。
法の枠組さえも越えて、人は生きねばならない。
多数派に寄り添うような価値観を身につけること。
この曖昧な掟を、子供の頃から誰もが身につけようと労苦する。
冷静に考えれば、比較的容易なことなのだ。
結果、危険性も減少し安定した生活を手に入れることができる。
節度ある大人とは、そういうものを差すようになってもいる。
社会の構成員になれば、逸脱することは困難だ。
人々のまなざしには社会的制裁に直結した威力がある。
元来は異なった原義の自己責任という言葉は、責の最終的な帰属先として用いられるようになった。
それに応じることのできる倫理的に完全な存在は、ない。
結果、リスクのある行動への意欲をスポイルする態勢ができあがる。
多少息詰まるが、人に迷惑はかけられない。
誰もがそう考えるべきとされた。
80億の人類で、ひとつの地球をわけあっていた。 表面上は等分に。
現実問題、たぶんに差別を含んではいたが。
権利については、人が享受しうる総面積を上回っているのかも知れない。
一人一人の権利はあまりにも大きすぎた。
実際に機能するのは、多勢の側に立つ者の権利であることが多かったが。
だからだろうか。
小説で価値観を提示することは罪になった。
03 イマ ーーChapter 抱擁
イデオロギーの是非など、忍にはどうでも良かった。
物語としてはそれでも楽しいのだから。
ただ、何が正しいのか。
何が誤りなのか。
その正しさは、現実的に実現可能なのか。
不可能であるならば、代案としてどうすべきなのか。
結論の出ない命題だけが、捨て置かれた。
だから、世界はテーマを失ってしまったのではないか。
04 忍 ーーChapter 章二のヨタ話
法律もローカルルールも、どっちも完全に守ろうと思ったら……その人は、何もできなくなると思う。
この二つのルールは、時に入れ子になって部分を交換しながら、大きな流れに沿って人を押し流すんだ……
それがこの国の人間が言う、正しいってことなのかな。
05 沙也加 ーーChapter ブチとマルの墓参り
孤独は私を傷つけなかったけど、心の循環から外れた私は滋養を得ることはできず、摩耗していく自分を予見してきた。
丘に打ち上げられた魚が過ごす最期の時のように。
友達が欲しかったわけじゃない。必要だったわけでもない。
でも……この体は社会を必要としていて、人並みに疲れもしたし脆く壊れることもあった。
社会に身を置くしかなかった。
その中で、私はいつか訪れる、周囲の圧力との葛藤の時を待っていた。
06 忍 ーーChapter ブチとマルの墓参り
一人だけが存在するということは、自我と世界が同じサイズになるということだと思う。
有効射程は認知限界までだけれど、定義としてはそうなる。
結局は、自分の内面を旅しているのと変わらない。
その意味で、僕も君も、不変の結果に至る同種のものなのかもね。
07 忍 ーーChapter ブチとマルの墓参り
ホルモンや心理的錯覚で人を好きになるというのは、皆がそうしていることだけど、口にしてしまうととても虚しいことだ
でも反対に、とても自然なことでもある
そんな魂の神聖不可侵な面さえ否定された世界で、人として立ち向かう方法があるとすれば……それは自己規定しかありえない
僕のことで言えば、外に向かって旅をはじめるのもそう決めているだけのことで、可能性に期待してのことではないところがひどく非人間的に思える
外か、内か。この選択は、僕や沙也加みたいな孤人には、どちらでも同じなんじゃないかな?
08 沙也加 ーーChapter ブチとマルの墓参り
人は誰もが自由を望むけど、本当に他者や外部からの干渉を一切受けないそれに……耐えられる人間はいないわ
09 忍 ーーChapter ブチとマルの墓参り
確かに生きるだけなら一人でもいいさ。けど……それはもっとも低い段階の欲求だけのことなんじゃないかなって
上を見れば、外を見えれば、その外縁に応じた絆があって良いと思うんだよ
10 イマ ーーChapter デート(仮)~甘酸っぱい何かのために~
空はいつだって黄昏で満ちていたし、それは忍が生まれた日からしてすでにそうだった。
誕生と同時に終焉を知らされることは、いかなる悲劇にも勝るあきらめを植えつける。
虚無の花に育つ。
80億人類の栽培した虚無の花畑が、今だ。
輝かしかった未来展望はどこに行ったのだろう?
11 沙也加 ーーChapter デート(仮)~甘酸っぱい何かのために~
私たちは互いに他者にはなれない
求めて近づけば、結局は一体になるしかない。自分の延長
そして離れれば他者であるが故に、遠く届かず満ち足りない
理想の距離がどこにあるのか、私たちは知らない
今までの、誰も知らない
皆、自分なりの距離を規定して、それで満足しただけよ
互いのプライバシーを尊重する位置を受け入れ、あるいは、相手の大半を支配する距離を是認し、そしてつかず離れず死ぬまで模索し続け……
覚悟という思考停止が、その絆が成就する時なのよ
その中に正解といえるものは何一つ存在しないのよ。ただ誰もが納得するしかなかっただけ
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笛子ルート1
01 イマ ーーBlog 公序良俗
あまりにも正しすぎる基準線は必ずしも万民の眼前に快楽を提供するものではないため、であると考えられる。
人の倫理は、その時々に応じて正義と悪の間を漠然と彷徨うものであり、時に入れ子となり、周辺の空気に同調するのである。
反対に完全な規律のみによって描画される世界は、明確な像を結び把握しやすい。
02 イマ ーーChapter 眼鏡探して
眼鏡がないと世界が霞む。
世界が揺らげば自分も霞む。
認識の上で、内面と外の世界が、密接な相関関係にあるように感じられる。
これはある意味、事実だ。
人の認識を育む糧が、外界からの刺激であるためだ。
だから外が変化すれば、内も揺らぐというのは正しい。
03 イマ ーーChapter 勉強・忍&あずさ編
学ぶという行為はどこまでも気高く美しい。
知識がたくわえられる日々は金品を貯蓄する喜びに勝り、今まで太刀打ちできなかった問題を分解しきった瞬間は全知全能になった錯覚を呼び起こす。
歴史という古い出来事には新鮮な驚きが隠され、
解を導く数字の技法は芸術性さえ帯び、
母国語以外の言葉ではじめて意思の疎通を果たせば溢れる童心はとどまることがなく、
物理が示す世界のルールは想像もつきないものであり、
校内で学ぶ節度ある集団生活のことわりに絶対的な価値を見いださないわけにはいかず、
一般的な領域を超えて学識を高める行為は称揚を受けるにふさわしく、
学んだ事柄が有機的に結合されより高次の体系的知識へと変じるのはある種の奇跡であり、
そして現状オーラル・コミュニケーションはただリスニング対策にかまけるだけの無価値な屑である。
……そう思っていう人間はたまにいる。
04 イマ ーーChapter 逃避行
忍は絆だけが世のあらゆる摂理から神聖不可侵に反故されるなどとは、微塵も思わない。
努力を失えば、たちまちのうちに形を失い、無価値な砂塵となって霧散する。
そんな代物であると理解している。
世に称揚される愛。
人々はあまりにも無条件に信奉してしまう。
その怖さや冷たさや無常の様を、見もせずに。
情愛は守らねばならぬ。
それを尊いと自覚し、聖別し、奉る必要がある。
05 あずさ ーーChapter 変質
失って、無意味になって、わからなくなる
みんなが生きた事実は残るって言うけど
……その事実だって、いつかどんな記録からも消えてしまう
無意味でいいんだと思う
終わってしまったあとは無意味でいいんだと思う
それがある今のうちに、あたしたちはーーー
今をーーー
あたしが、終わりまで見守るから!
あたしが最後になる!みんなが寂しくないように……
消える時に、無意味になる時に、そばについてる!
だから、だから
終わったなんて、思わないでーーー
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葉子ルート1
01 イマ ーーChapter 葉子との出会い
左右の道は等しかった。
自由も束縛も等価値だった。
孤と群も差はなかった。
個人の主観を入れなければ、苦しみはない。
運命に限らず、何かに支配されることは自然なことだ。
どの個体も全宇宙に等しくはないのだからーーー
含有される存在は全て、何かの下位に位置する。
外圧や倫理や規則や運命や使命に、操られている。
02 イマ ーーChapter 葉子との出会い
各人の心が聖域化していく。
だが一人は寂しい。
メッセージを投げかけねばならない。
出来うるならば高密度に凝縮された自意識を持って、他者を衝撃・影響を与えたい。
発信型メディアーーーネットワークが十全な環境を与えた。
03 イマ ーーChapter 葉子との出会い
心の垣根が低くなっていくさ錯覚さえあった。
低くなって、低くなって、足首ほどにも下がって。
それは液状のイメージど化した。
水たまりに、素肌を隠すことのない忍と葉子が立っている。
言葉はいらない。
水のようなものが意志を伝えてくれる。
いや、伝えるという言葉さえ適切ではない。
壁が取り払われ、自我を共有しているのだ。これは。
境目がなくなれば人は世界を重なる。
時間感覚の消滅。
濃密な、そして曖昧な瞬間が持続する。
04 イマ ーーChapter 葉子と歩く道・後編
忍は唐突に、千金にも値する価値を実感した。
今という瞬間。
胸が優しく搾られる。
甘えにも似た感情。
涙が出そうななほど貴い。
肺腑からもぎとられた一房の吐息。
音もなく大地に吸い取られた。
05 イマ ーーChapter 放課後の可能性
街には人が大勢いる。
商店街などで見られる主婦や老人・子供の姿はなくなり、カップルや若者の集団が目立つ。
人々はいかにも楽しげに練り歩くが、彼らの姿は皮膜がかかったようにぼやけている。
他人事が群れをなしているように見えるのだ。
それは街の人々が、生活から切り離された姿であるが故だろう。
着飾り実態を隠した、没個性化した群衆。
本来のものではない虚像が、見る者に薄皮をもたらす。
形容として不自然といえば一言だが、人の資質について語る時、簡略化が過ぎれば本質を喪失する。
無論彼らにも、生活に面したそれぞれの個があるはずだ。
虚飾などではない人なのだ。
しかし画一的に塗り込められた本質は、装飾を貫き通すものではない。
彼らを映像だと言われても、戸惑うことはないような。
06 イマ ーーChapter 放課後の可能性
明るい未来社会。
そんなものを、必要以上に眩く知らしめたのは高度成長だ。
あまりにも輝かしいビジョンは至高のものであり、信仰と化して人の心に忍び入った。
未来はいつから途切れ、霞んでしたったのか。
忍は知らない。
彼が生まれた時には、とうに未来などなくなってしまっていた。
若者にとって生きるとは、永続する圧迫にさらされることだ。
時間は未来に進んでいく。
希望とともに進んでいく。という幻想を連れて。
だが希望は薄れた。
若者の目に人生は、体験する前に終わってしまった行為に等しい。
未来の結末がわかりきったものである時、では現在今とはなんだろうか?
それは回想にも等しいものなのかも知れない。
思い出にはソフトフォーカスがかかる。
このイメージは万民に共有されるはずだ。
忍が見ている光景で、人々の様が煙るのは、そんな理由もあるのだろう。
章二はこう示唆している。
人は一人で生きる力を持つしかないーーー
07 イマ ーーChapter 葉子に触れる-続き
根元的な性欲は、相手への密着を要求するものである。
神経の詰まった感覚器官でつつくだけでは、それは満たされない。
接触。密着。
人は一つになりたいのか。否である。
他者を感じたいが故にそれを渇望するのである。
誰かと融合したいと考える者はむしろ少数だ。
自己を保持したまま、他者を感受する。
表層と下層、二つの領域を持つ人類は……そういう心の機構を構築しなければ、とうてい他者の暗部を認めることはできない。
08 イマ ーーChapter 忍、刺される
理由を設定した時、人は心のかたちを規定する。
正常な機能、その全体を構成する微細なパーツが、再び諸世界の海から入れ子式に結びつく。
なぜ寒いのか?
血が抜けているからだ。
既知情報。
どのような理由でその状況に至ったか?
記憶が映像とともに甦る。
それは確かに、事実であると思えた。
09 イマ ーーChapter 葉子待機-2
世界は灰色。
苦痛は永遠に引き伸ばされる。
麻痺してしまえば楽になる。
最初から愉悦を知らなければ楽になる。
そのための保身が、無知である。
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IMA:category2
―――彼はいつも独りだった。
わずかな時さえ惜しみ、施設を抜け出しては空を見上げた。
世界から忘れ去られようとする、今この時に。
殺風景で命あるものの息吹を感じられないこの空間で
永久とも思える孤独を強制される毎日に
絶望すら忘れた。
過去の栄華に思いを馳せたところで……
彼の胸を、打つものはない。
その他の者たちは、しかし異なった所感を抱く。
忘却されめよう築き上げた世界で、狭き領土を巡り争う。
老いたものを、若者が受け継ぐ。
世界が連綿と繰り返してきた摂理をなぞり
若者たちは敵得た。
安息の場所などいらぬと、ただひだすらに刃を研ぎ。
誰かの《聖域》を破壊してもなお、振るい続けた。
……世界は偽りと裏切りで満ちている。
人と人は傷つけ合う。
どんなに親密でも衝突は避けられない。
だからこそ。
人は争いを捨てられぬのだと。
相手を傷つけるにとしか出来ぬのだと。
誰あろう優しさを求め抜いた彼こそが
涙と共に知るのだと……
千々に引き裂かれた心のピース。
どうか、優しく配列されますように―――
Forever long. No matter how far is.
For the somebody one... For the one that will meet someday.
At the place that I can see nothing. But, the memory.
The script meaningless.
But the technique.
He's Aulelius, the King, King of mankind and breaks the barrier of species.
人々の間で繰り広げられる理解と共感、反発と衝突。
そして、傷つけ合い、殺し合い。
獣欲の求むるままの、破壊。
そんな辛いだけの世界に、未練はない―――そう、思っていたのに。
Aware of "that" will change the world surrounding us.
Will reach to the new world, will arrive to the "sanctury".
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あずさルート2
01 邑西 ーーBlog 一日外出権
少年たちは外の世界を知る。
そして帰り、仲間にそのことを話す
彼らは秘密を共有し、その心に同質のごじ構成要素を共有する
全てが同じである必要はない。個性はあって良い。だがこうした、仲間意識とでも呼ぶべき資質を植え付けることには、意味がある
02 南 ーーChapter 南の勧誘
全てを持っているということは、何も持っていないのと同じだ
03 フランシス ーーBlog 好きは罪ですか?
この美しい名前を、私は美しいと習いました。
私は美しいものと認識し、愛しています
04 イマ ーーBlog どうせ逃げられやしない
忍のイメージにおいて、海は巨大な脳だった。
脳が頭蓋のうちで、脊髄液に浸かっている……ということを知ったからだ。
有機的に繋がった海には、無数のプランクトンが存在している。
その二つが重なる。
05 イマ ーーBlog ちっくたっくちっくたっく
人は人を改良する。
いろいろなツールを用いる。
怒声・体罰・ルール・決まり・優しさ・ぬくもり・食物・玩具……倫理―――
放置された赤子はせいぜい獣にしかならない。
人はその設計思想に、改良を含んだ命だ。
06 イマ ーーChapter 探し回る忍
あなたが納得するまで同じ日々を繰り返したなら、きっと辿り着ける
だから、待ってる
わたしが消えてしまう前に
迷宮の先で―――
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沙也加ルート2
01 イマ ーーChapter 宗多との出会い
子供らは喜怒哀楽に感情移入しやすい。
抑制のきかない精神は踏みとどまることができない。
閉鎖的な集団内では、大枠を外れたローカルルールが発達するものだ。
その中では一つの巨大な善悪が定められ、固着する。認知的な不協和を避けるため、正当化は著しい。
イジメられる側に問題がある。
この論理は、彼らの良心の呵責を麻痺させる機能を持つ。
02 イマ ーーChapter 宗多との出会い
人間は生理的に人を嫌うことがてきる。
どす黒いものが胸裡をよぎる。
そう、生理的嫌悪感だ。
生理的嫌悪感をこれほど発達させた動物が、他にいるものか。
本質なく人を拒絶するシステムだ、それは。
03 忍 ーーChapter 皆殺しの狩り・3
すべてに意味を求めて、正解が見つかって……
それが不本意なものであったら。それか、見つけた意味にさらに意味を見いだそうとして、自分の価値さえ見えなくなったら
無でいいということになってしまわない?
04 忍 ーーChapter 皆殺しの狩り・3
積極的に死にたいのなら、どうしようもない。死ねばいい
……生きることも死ぬことも変わりないなら、頭から順番に試していくのが普通だよ。機械なら
05 沙也加 ーーChapter 皆殺しの狩り・3
どこに向かったらいいのか、わからない……
自分が何者で、何をするべきなのか、わからない……
あの子たちを大切にしてはみたけれど……
死んで……失っても……
悲しみもなく、乾くだけだった!
こんなの、人間じゃない
人間じゃないなら……じゃあ、
どうして、人の形をしているのか……
この涙が、悲しみの涙なら良かったのに
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笛子ルート2
01 イマ ーーBlog 予知
古典物理学におけるラプラスの魔とは、世界全ての原子位置と運動量を知り、瞬時にそれを演算できる絶対的な架空存在である。
ラプラスの魔はその絶対的な演算の結果として、
全ての未来を知ることになる。
しかしこの概念は、不確実性原理によって決して成立しないとされ、幾多の超常能力を擬似的に再現してきた派生現象学上においても存在はほぼ否定されている。
1と0上に全ての世界が乗っている。
しかし1と0は、その予期される性質以上の複雑さを発揮し、決して先を見通せない仕組みをもたらした。
趨勢は予知できない。
だが人の営みにおいては、目前に垂れ込める暗雲だけが重要なのであり、思考実験による悪魔の否定など何の慰めにもならない。
依然として―――神はサイコロを振ろうとはしないのである。
02 忍 ーーChapter 笛子の挙動
一人で古代の寒さと暗さと空腹の中に置かれたら、尊厳なんてあったものじゃないんだろうな
守るものがないと……あるいはそれは家族だったり倫理だったりして、そういうものがないと……心の強さ発揮する場所がないんだから
人間には、他人が必要なんだ。その善し悪しを別として
03 忍 ーーChapter 笛子の挙動
もし僕らの輪が砕け散ってしまうとしても、今までの楽しかったことを忘れないようにしようよ
そこには最善の今があったんだって力強く思うんだ
ただ時間の果てに置かれだけの、むごたらしい結末よりも、価値があると信じよう
最後の瞬間によって、それまで歩んだ道筋を評価することをやめよう
結果論を捨てる。いずれ残酷な時間に立ち向かうには、それしかないんだから
僕は希望を持てとは言わない
明るい未来を信じて、賭けろなんて言えない
祈る神さまもいやしない
僕たちは一人なんだ、笛子
04 笛子妹 ーーChapter 笛子の挙動
……最期に逃げこめる場所があるっていいものよ。人は尊厳を捨てたあとも生きていかないといけないものだから
05 イマ ーーChapter メモ・心を乱した者たちについて
誰もが差別意識を持つ時代である。
優劣を競い、知的増税に随伴し損ねた者を攻撃し、一般性を殺傷し、相互憎悪の構図を描き上げていく。
ネットワーク。網の目。即ち、
近代社会と呼ばれる、負と憎悪の網―――
社会は必ずしも善に守られてはいないことを認めざるを得ない。
信頼を放棄しなければならない。
疑心に陥らねばならない。
我が身と家族を守るため。
精神の驕慢さを守るため。
06 忍&あずさ ーーChapter 笛子を想って
信仰には理屈がない。相手がどうあっても異存してしまおうという……そういうずるさが見える
信頼には覚悟がない。相手が裏切ったら信頼というものは壊れてしまうから。
でも、信じちゃいけないということはない。
07 イマ ーーChapter 白紙委任
かつて国と人を繋がりが重い時代があった。
家族が大切だった時代があった。
互い報い会う結束が、何よりも素晴らしいと断定できた時代があった。
そして今、ひとりひとりが自らの領土を手に入れるようになると……それらの繋がり方は次第に外縁に遠ざけられるようになった。
行きすぎた友情は侵略と変わりない。
そう叫ばれるようになったからだ。
どこからが侵害で、どこからが絆なのか、判断基準は明らかにはされない。
自分以外の誰にもわからない。
人が育てた最初の虚無の花は核だが、次に栽培することになったのは自殺の権利である。
その萌芽は豊かに狂える世代を土壌として確かに生まれ始めていた。
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葉子ルート2
01 葉子 ーーChapter 殺人事件の噂
つい最近まで、世界はおかしかったんですよ。ううん、今もまんべんなくおかしい。ほんの十年前、二十年前もおかしい。そもそも
世界がまともでいた瞬間が、人が地に満ちて以降、果たして一秒たりとてあったのかどうか―――
02 葉子 ーーChapter 殺人事件の噂
日々の生活の中でも、ささいな行き違いはいくらでもある
被害がなければ、性格のすれ違いで済んでしまうことですけどね
個性も"狂い"には違いないわけで
03 葉子 ーーChapter 殺人事件の噂
悪行は罪です。自覚ある悪行は潔いですが罪です
しかしもっとも危険なのは、自覚のない善行です
革命の論理ですから……自分のしている行為がどのような結果を招き、誰をどれだけ傷つけようとも、欺瞞による自己正当化が起こります
正しいからやってよい。その感覚を持ってしまうと、どんな残酷なこともできてしまいます
でもそれは本当ならば、罪の苛烈さをともなう茨の道
心の痛みを代償に支払い続ける必要があるんです
背負えるだけの罪より大きく、人を救おうとするのは危険なんです
04 イマ ーーChapter 斎の相談
国家的報復は、私怨とは似ているようで、異質なものに思える。
意志集合体である国家の判断は、時に意固地に少年のような、無理を通そうとする。
05 イマ ーーChapter 葉子のご相談
普通に生きていれば、様々なことで汚れ純度を失っていく心。
妖精さえも見通す無垢な貴石も、20年を過ぎる頃には傷で濁った石塊。
現世を生きるには、それで良い。
どうせ汚れる人生なのだ。
繊細さはいらない。
06 葉子 ーーChapter メイドご奉仕
本当のお日様だって、きっとそうなんです
自分のために光って、そしてついでに何かを温めている
忍さんの意志は関係ない。私たちが、勝手に好きなだけ
07 斎 ーーChapter 真実
……言っていた
忍様は、言っていた
輝かしい希望など、過去にしかないと
未来には苦しみしかなかった、と。まるで見てきたように
それでも、生きねばならん―――人は
何者かの犬にならずとも、あなたの宿願は果たされただろう
たとえ不利であろうとも、一からの出直しになろうとも、純粋な思いがあるのなら、誰に頼ることもなく切り開くべきだった
しかしあなたは古い時代の体現者たろうとした
望んで挑み、そして敗れ、ついには腐れた
哀しいかなそれが現実であり、苦しみしかない未来の一端だった
あなたは見落とした。戦国はあなただけに優しくはなかった。身も凍るような絶望というのは、そういうことも含むものだからだ
お悔やみ申し上げる
……そして俺は、門倉の末期を看取る者になろう
塚本斎の名において、覇者の血没する、墓所までの供として
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IMA:category5
―――21世紀
人類ははじめて「敵」を認識した。
それは
同じ人類や星の同胞などとは比べものにならないレベルの超越的存在。
これまでの人類の戦争の歴史など
じゃれあいとしか呼べるものではなかった。
空前絶後のそれに対して、人々はあらゆる手段を講じはじめる。
その先鋭となるのが、あらゆる「現象」を操ることのできる
能力者(USER)を生み出した「群像委員会」であった。
しかし、一時期を全世界規模まで膨れあがった委員会は
その巨大さゆえに内部崩壊していく。
人類は、人類以外の敵を前にしてもなお
人類同士での争いをやめようとはしなかったのである。
そして人々は、世界最高の現象行使能力を持たされた少年に希望を託した。
しかしそれが、少年にとっての希望であったわけではない。
しかしそれでも、少年は、戦う道を選ばざるをえなかった。
すべての希望を失っでも、
敵対していた、憎みさえしていたUSERたちを従え、
およそ人の及びうるものではない「敵」に対して
幸せだった頃の記憶だけを胸に―――
Forever long. No matter how far is.
For the somebody one... For the one that will meet someday.
At the place that I can see nothing. But, the memory.
The script meaningless.
But the technique.
He's Aulelius, the King, King of mankind and breaks the barrier of species.
戦争の果てに待つものは―――
哀れなる「敵」と「人類」の得られたものは―――
少年が最後に辿り着いたのは―――
少女に導かれた―――そこは、最果て。
Aware of "that" will change the world surrounding us.
Will reach to the new world, will arrive to the "sanctury".
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戦争編
01 イマ ーーChapter 過酷な時-0
人の世に神はなく。
神なき世界に奇跡なし。
奇跡なき世に救いはない。
あるものは、わずかばかりの砂金にも似たような希望だけ。
02 イマ ーーBlog GVP
カナダの学者、M・マクルーハン、その著書を中心として広範なメディア論を展開した。
狂騒的な人物であるとされたマクルーハンであり、その知的業績全てに対する理非は置くとしても、活字に続くテレビ・ラジオなどの媒体が登場したことで、人の感覚機能を拡張され変容してきた……とする言説は、まず適切と言って良い。
さらにはインターネットなどの、極度に電子的メディアが地球全体を覆うことにより、地球全体が一つの共同体へと変質・統合されることをも指摘していた。
これはグルーバル・ビレッジと呼ばれる。
だが実際のところ、人類は最後まで、国家としての対面と対立の渦中に置かれた。
インターネットによる一体感は確かに存在したと言えるが、国家・民族・思想・宗教といった領域性を解体するには至らなかった。
インターネットは接続者全員に地球環境規模の可能性を与えたが、受信側の可能性は有限であり、結果構築されるのは、極めて近視眼的な共同体の群れであった。
これら新たなコミュニティは、地理上の制約からは解放されるが、依然として言語的制約に囚われる。地球上の言語は統一されておらず、おのずとその境界線は既存の国境とも重複する。
大きな発展性を有しはするが、国家を解体するパワーに乏しいインターネットは、合一すべき楽園を提供するには至らなかった。
仮に『グルーバル・ビレッジ』がネット上に誕生しえたとしても、それは数限りなく存在する対立の垣根を取り払うため、全ての問題を同一線上で扱わねばならない危険性を持つ。
高度に複雑化し、正義というものが無意味化された諸思想の混沌においては、人間の互いに対する許容量の欠如が大きな問題となって立ち現れる。
問題は解決しない。
希望との距離は縮まらない。
ネットをもってしても、である。
またネット上の各コミュニティは、集団成極化現象により中庸が排除され、いびつな集団へと形成されることも多く……相互の親和性はますます失われていく傾向が見られた。
21世紀における人類の版図は、言語的制約に束縛されない範囲での、地域地盤を必要としない程度の可能性を持つだけの、無数の共同体という形に結果された。
この現象は『再結合』もしくは
『Transition of the shape of spots (斑状の推移)』 と呼ばれる。
思想により帰属集団を再決定できるという選択肢は与えられたものの、人間の根本的な問題解決の一助とはならないものがインターネットであった。
これはある意味、人類感覚のバージョンアップとも言えるものであり、期待された楽天的未来像に繋がる道ではなかった。
もしろ、似通った思考の持ち主が集まることで、極端な意見が抑制されず、集団間の対立はさらに助長されるとも考えられた。
このように、インターネットは人類にマイナーチェンジをもたらすに留まったが、世界規模の問題に対処すべく、新たなパラダイム・シフトが必要とされ続けるだろう。
03 ジーン ーーChapter 施設での日々・2
平気も何もわからんのでしょうに。洗脳が認識できない心は、自分自身と変わりないよ
04 イマ ーーChapter 施設での日々・3
知性とは、不思議な現象である。
文字と数式を印刷した紙切れが、ただ視野に入るだけで、人は脳機能を増強できる。
その果てにあるものに、忍は興味がある。推論している。
知性の結末というものに。
05 イマ ーーBlog 睡眠
平常時、人の心がどこに宿っているかは判明していない。
心が存在している物的証拠もなく、精神活動を統合する人格が宿る部位も発見されていない。
だが人格は、無数に存在する脳機能を統合するかのように存在する。
06 (忍)&イマ ーーChapter 心海
貴宮忍最深領域に秘められていたもの……それは、
(これを手にした瞬間、僕の死が決まる)
(下手をすれば、最後の日まで保たない……それほどの負担を背負う)
(だからなのかな。僕の予見が、未来を映せないは)
(こうなることは、決まっていたのかも……悔しいけれど)
(でも、やるね……章二)
(全て、僕のものにしてしまうよ)
(奴らに消費されてしまうくらいなら)
(僕のものに―――)
(在り日に世界征服を嘯いた、愚かな君に敬意を表し)
(世界を、君の好み求めた聖域に、組み替える)
(敵に一太刀)
そのためには?
対神対識高次病原概念『CODE-T』―――
07 忍&イマ ーーChapter 心海
手を伸ばす。
カードを掴む。
そしてはじめて、命令文を発した。
「Omnipoten Network Management Protocol」
世界の王たちが目指した境地、人類統一の確約とともに、
貴宮忍、起動―――
08 イマ ーーChapter 過酷な時
過酷な時が来ようとしていた。
だがそれさえも、終末に比べれば、許し得るものと言えた。
結末の世界では、人類史におけるどのような犯罪行為も許される。
悪逆非道な行いも、演じられるべき舞台が消失してしまうのであれば、無である。
今の苦しみ、そして如何なる犠牲も……過程に過ぎない。
だから確定された破局対し、人はどのような非人道的手段をも講じることができた。
犠牲が出ることがわかっている作戦。
それに従事……否、主導するとい立場の忍だ。
王の王たる責務として。
期待されるのは、奇跡でしかない。
犠牲のない、完全無欠の勝利だ。
勝てば……また人は、終わらない楽園に身を置けるのだから。
人同士の、他愛ない営為に耽ることができる。
殺すこと、盗むこと、欺くこと、犯すこと。
なべて幸多きことだと言えた。
残念ながら、人は神ではなかった。
人の世に神はなく
神なき世界に奇跡なし。
人類が絞り出したのは、大多数の犠牲をもって、ごく少数を生存させる方法だった。
他に手はない。
現象に触れ、事象を成して、到達すべきに人造奇跡。
そのためのUSERであり、GVPであり、貴宮忍であった。
09 南 ーーChapter 動乱前・2
倫理は、生き残ってから考えればいいことだ。違うか?
10 南 ーーChapter 動乱前・2
自分がここにいることを、確かめたい。そのためだったら何でもする。それは相田も、ジーンも変わりはない。俺たちの誰もが、存在意味を求めている
おまえがそれをくれるというなら、俺たちの中に文句を吐く者などいない
おまえが、王になってくれるというなら―――
11 忍 ーーChapter 革命
聖域は不可侵なんだ。大切だから聖域なんだ。だけど……せっかく一人一人孤立している人間なのに、一つにならないといけないなんて、悲しいね
12 千鳥&忍&イマ ーーChapter 革命
雛が親鳥を見るように。
生まれなおしたばかりの忍は、姉と呼べる者を見た。
千鳥 「……忍!」
そっと抱きしめる。
できたばかりの頭が、潰れてしまわないように。
忍 「姉さん……」
眼球再生の過程で生じた汚水は、大量の涙液によって稀釈され体外に排出。
機械的に流れる廃涙は、しかし懐かしい匂いに抱きしめられて、次第にその純度を高めていった。
そんな気が、忍はしたのだ―――
13 灰野 ーーBlog 最後の日
正しい行為などない。あるのは、人に都合の良い概念だけだ。人は概念によって駆動するのだから
14 イマ ーーChapter 新たな日へ
同意なき干渉は罪である。
ゆえに全ての親は罪人である。
子を教育するからだ。
子を教育しない者は外道であり、やはり罪人だ。
自己矛盾から人は逃れることはできない。
もっとも正しき行いは、孤立することである。
鋭く、貴く、厳しく、甘く。
部屋に籠もる者こそ、圧倒的に正しい。
なぜなら誰にも直接的影響を与えないからだ。
心を共有することは、少人数に限り成立するだろう。
人類は一つにはならない。メディアの力をもってしても。
無数の聖域が在るばかり。
結束がないそれらは、弱い。
未成熟で、青く、幼く、たおやかな生命相。
現段階における人類の限界点でもある。
15 忍 ーーChapter 新たな日へ
人は狭いよ。何も許しはしないさ。合一もできない。ただ共感して共有するだけだ。それだって、世界規模では起こらない。相反しているからだ
人種、理念、言葉、印象……ありとあらゆる場所に、反目の種があるんだ
たまたま人類全てが互いに許し合えるなんて、どれだけ時を重ねても起こりえない。確率の上ではあるかも知れない。けど、それこそ絵空事だ
たまたま全人類が互いを全肯定できる瞬間なんてのはね、宇宙と同じ広さの空間を飛ぶ二匹の蜂がさ、衝突するのと同じくらい起こりえないことだよ
だけど、それを否定しているんじゃない
ただ、人はそういう性質のものだって、わかるんだよ
99%の孤独と1%の共感で、生きていくものなんだ
世界はさ、俗人の愚かしいうねりで動いていくんじゃないか
一部の天才だけが世界を動かしている……なんて迷信を、君まで信じているわけじゃないだろ?
16 南 ーーChapter 新たな日へ
俺はおまえを守る。同じ人類の、未熟さ全てから
権力も、毒殺も、狙撃も、不慮の事故も、近づけさせない
任務だからそうするんじゃない。俺がすべきだと思うから、そうする
責任が重いのであれば、皆で背負おう
青木ヶ原ならびに軍艦島出身のUSER、南レイ以下残存17名、ユニット・アウレリウス/貴宮忍の指揮下に入ります
17 イマ ーーChapter 新たな日へ
そこにもまた、小さな共有があった。
軽く表層をかすめただけの、小さな共感だ。
深層の相互理解とはほど遠い。
なのに、なぜ人は、そこに価値を見いだすのだろう?
懸命に、見いだそうとするのだろう?
愚かで矮小な肯定。
だが忍には、今の忍には、痛いほどよく理解できた。
18 南 ーーChapter 協力者を求めて
現実はどんな美しい倫理さえも突き崩す。まさにな
人を殺すべきではない……人を殺す必要がある局面など、掃いて捨てる程ある
盗んではならない……警察が容疑者の所持品を接収することは、例外とされているだけで奪い取る行為には違いない
定義の幅を人間から外せば、世界は強奪で満ちている
欺いてはならない……欺きは国家群を維持する価値基準だ
倫理というものは、人のためのものであるから……地球規模で矛盾があるのはいい。要するに人に都合の良い価値観なんだからな
ただ……それこそ滅亡が目前に迫れば、倫理は薄まるものだ。無理強いだって許されてしまう。そうしなければ……滅びるだけだからな
人がいなくなれば、倫理さえ維持できなくなる。倫理の行使者がいないのだから当然だ。だから倫理を保持するために、倫理を裏切ることもある
自己矛盾だな。俺はよく、倫理の意義について考えたよ
19 忍&南 ーーChapter 協力者を求めて
忍「……倫理には、意義はあると思う。人が人らしく生きるため、人が人らしく思える倫理を用意したんだからね」
南「だが、決して堅持はされはしない」
20 忍 ーーChapter 協力者を求めて
美しい絵を見て感動するのと一緒でさ、倫理を守ろうとして抗う様子を……僕は攻撃できない
要するにどこに感情移入するかって部分なんだ
僕は罪のない人を殺すことには抵抗がある。今現在、そういう設定になってる。だから魔女狩りの倫理は好きじゃない
でも意見を人に押し付ける行為に立ち向かうことには、美的なものを感じるよ
21 イマ ーーChapter A級の味方
嫌と言うほど、悩んだことだ。
悩んだ末に、決めたのだ。
揺らぐまい、と思う。
動じまい、と思う。
心を凍てつかせるのではなく、背負う全てを認めようと誓う。
今後忍が殺し、傷つけ、奪うすべての者たちに。捧げる身は一つしかない。
償うなど、できはしない。
罪は罪としてそこにあり、打ち消せ改竄されないのだから。
世界に、歷史に刻まれた情報は、改竄されないのだから。
罪深き者が処刑される様を、人が『償われた』と定義づけるしかない。
あらゆる規範の中で人は生きる。
人の枠を外れることはない。
罪だからだ。
法と倫理は、人の善なる総意によって導かれる。
だから人が変われば、倫理も塗り替えられるはずだろう。
22 イマ ーーChapter A級の味方
動き出す。
人類は駆動する。
空に押し潰されるだけの存在が、自らの内部に活路を見いだし、財産を賭ける。
たとえ全てを失ったとしても、人の形で生き残る。
人権を投棄される。
倫理はうち捨てられる。
自由も忘れ去られる。
そうまでして生き残ったとしても、かつての人としての日々はない。
望んで進む道筋ではない。
そうしなければ生き残れないからだ。
ある意味、進化には違いない。
人為的な変化を進化と呼ぶのなら―――
結果、人は形だけを残す。
そう決めた。
空は融ける。
じき、融ける。
濁って、うねり、大地を犯す。
人を呑み込む高波に、最果てまで逃げ場はないように思う。
事実それは、物理の地平を超えてくる。
心が失われる時が、近づいている。
23 フランシス ーーChapter 隔離された記録・2
たとえ人が滅びても、わかたれた愛情の価値は減じない!注ぐ機会を惜しみ、喪失することこそ罪なのです!!
24 イマ ーーChapter 姉弟
歪な泣顔に、人間味はない。
もしかすると千鳥は、努力して泣いているだけなのかも知れない。
それは、せいいっぱいの、ヒトだ。
千鳥の演じるヒト。
無機的な人間像。
25 (忍)&イマ ーーChapter 姉弟
人間は捨てたものではなかった。
理解が遅れたけれど、ようやく確認できた。
聖域の外にも、無数の聖域がある。
無数の聖域が集まって、大きな界をなしている。
それこそ世界だ。
今までの世界である。
抵抗力のない弱い群れではあるが、
闇雲に他者に罪を背負わせるシステムではあるが、
交換の仕組みに過ぎないものではあるが、
(好きになれそうな気がするよ、みんな)
好きであれば、殺せると思う。
好きだからこそ、奪えると思う。
見ず知らずの誰かに対し、背負う罪悪は苦しいものだ。
だが今、責任をもって、命を預かることができそうだった。
返せる見込みはない。
忍は心いっぱいの賛辞を、滅びる者たちに捧げた。
よくできました―――
さようなら、人類―――
26 イマ ーーChapter 落日 ※Blog 交換
人間社会はある種の交換システムである。
人が密集する意図は交換にある。
交換が社会を社会たらしめている。
27 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
創発とは、単純な要素の相互作用から、より複雑な上位の全体機能が発生する例……わかりやすいところでは、例えば迷子のアリを連想してみると良い
迷ったアリは単体では、その状況を打開できない
だが仲間が餌場を発見し、フェロモンを誘発することで合流作用が発生し、行列によって餌を巣に運ぶという上位行動が立ち現れる
こうした上位の行動は、末端を見ても予測も説明もつかない
個々のアリはフェロモンを発生させる機構はあっても、行列を作るという命令はインプットされていないのだ
アリは行列を作ることを知らないと言える
なのに行列は形成される。必ず
下位要素の結合により、より上位の秩序が形作られる。だというのに個々の端末には、上位現象についての意識はおろか自覚指示部位も存在しない
原子はあらゆる物体を構成する
当然、あらゆる物体の機能や性質を示す特質が、原子にはなくてはならない。だがそのようなものは明確には把握できない
集まることで、それはやっと観測できるのだ
固は集合することでまったく別の性質を獲得する、と言った方がよいだろう
アリについても実際に起こったものを見て、我々は後講釈で解析しているに過ぎない……それができないものも多い
28 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
魂の座は、脳であると誰もが思うだろう。それは核心に近い推測だが、医学的に見て脳のどこかに、人間の意識を司る部分は存在しないのだ
つまり意識とは現状、錯覚としてしか定義できない
29 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
私はクオリアについて語っているのだ。では赤いという詩的な思いは、どの神経の発火によってもたらされたのかわかるかね?
認識までは物理的に成立するだろう。それがどこから感覚へと化けるのか
認識の副産物として心があるのか。おそらくは、これが正解に近い
心を生み出す装置がない以上、神経の因果関係によって意識は説明されねばならない
30 邑西 ーーChapter 隔離された記録・3
群体は我々の認識を越えた存在だ。彼らはもしかすると、存在していないかも知れない。心のように
科学の上に立つ人類にとって、自己とは幻想と断定するしかないわけだな
そして我々は、はるか高みにいる、上位幻想に侵略されようとしている―――
31 イマ ーーChapter 人類結合
虚人たちの群れが、人間社会の終幕となる。
心のない社会。
交換のない社会。
アウレリウスとして、喜怒哀楽を知らずに育てられた忍は、だが学んだ。
悩み触れあう人の、心地よさ。
機械のような人間だと自身を定義づけていた。
そんなことはなかった。
忍もまた、人だった。
哀れで愚かで尊いものだった。
32 イマ ーーChapter 人類結合
選択肢はなかった。
一つもなかった。
可能性の分岐はなかった。
パラレル・ワールドは否定されていた。
ならばこれは、一繋がりの物語。
記事である。
更新され、史実に一歩遅れて記録されている。
治療には、追憶が求められた。
いや、治療過程そのものがまさに追想だったのだ。
整列。
ないしは、配列。
よって、それは予知ではない。
33 イマ ーーChapter 人類結合
ヒトに芽生えた神を埋葬するに相応しい偉容。
聖なる一撃によって、無知なる神は知るのだ。
自分以外の誰かが、存在したことを。
慰められるに違いない。
孤独の神に捧ぐ物語。
絶無に行き着く苦痛と悲しみ、神を知り涙する者の存在を感受しながら、消えることができますように。
34 イマ ーーChapter イマ
安心なさい。人類は孤独ではない
いつも苦痛の悲鳴をあげている、あなたの末梢神経たちにも、そう言ってやんなさい
彼らはもしかすると、孤独に泣いているのかも知れないのだから
35 イマ ーーChapter イマ
あなたが大切だと思えた。他者を、愛せた
他者を意識することで芽生えるのが社会性なら、
私はそれでやっと孤独から解放されたことになる
ならば、人間らしい生き様を
胸を張ってヒトと名乗れる営みを!
36 忍 ーーChapter イマ
ヒトは短い寿命を生きる。だから今は全てではあるけれど、それは明日のためでもある
明日を夢見て生きるものが、ヒトなんだと思う
37 忍 ーーChapter イマ
個々の原子があつまり、
神経が形作られ、
神経が集まり、
機能を備え、
無数の機能はまた、意識へと昇華していく。
さらに、先がある。
38 忍 ーーChapter イマ
世界は俺に、日常に戻って良いと告げたのだ。
こんなに嬉しいことはない。
絶対の幸せのうちに、
ログアウト―――
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「あの頃の僕等に」
手のひらに信じるもの全て
つかんでたあの頃
押し花を大事に持ってた
でももう捨ててしまった
喜びや悲しみ抱え
僕達は何処へ行く
夢でした 変わらずにいること
人は何を探しはじめる
笑ってたあの頃に僕らに
戻れないけれど
あのときの恐れぬ強さを
今頃欲しい気がする
過ぎ去らば どんな夢でも
忘れゆく 消えてゆく
見渡せば 誰もいなくなった
子供たちの声が響いた
喜びや悲しみ抱え
僕達は何処へ行く
夢でした 変わらずにいること
人は何を探しはじめる
てのひらに信じるもの全て
もう一度 つかんでみよう
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エピローグ
01 忍 ーーChapter お茶会-2
人は群れることで深化した。
我々は人の気持ちを推し量る。
読心することで、人と人の距離を維持しようとする機能がある。
これは社会的複雑性の読解力と言われる。
相手を理解することで、共存が成立するのである。
その中からルールが生まれ、倫理が育った。
単純には、隣人を憶測する能力のことだ。
02 忍 ーーChapter お茶会-2
虚無の花枯れたあとの世に。
憤懣がきざしてきた。
こらえようのない感情だ。
叫びたい。
わめきたい。
歩きたい。
赤子が、泣き叫びながら外界にはいでてくるように。
03 忍 ーーChapter お茶会-2
ああ―――
戻ってきた。
僕の聖域に。
だから今だけは、自分の罪に感謝しよう。
この帰還に、感謝を。
もう一人の自分に、感謝を。
世界に、謝罪を。
そして僕は、秘められた園で、隠遁を約束する。
04 忍 ーーChapter エピローグ
沙也加は言った。
世界は無数の記録でできている、と。
模倣子以外の媒体が生じうる余地があるのだと。
僕はその考えを信じる。
今まで生まれ、死んだ全ての生命が、どこかに記録されているかも知れないのだ。
救われる考えだ。
05 忍 ーーChapter エピローグ
明日は、楽しみですか?
こちらは、今日も風が吹いてる。
きっと明日も、吹くと思う―――
斯多葛学派主张自然法与朴素的平等思想,从这个角度而言,许多西方思想与理论都无法脱离其脉络
罗密欧关心的理论应该是散乱的,是作为知识本身而不是体系去接受的,因此每句话语的来源或单一或只是朴素的考量。(这个在关于利维坦的讽刺那句体现的很明显,那只来自于霍布斯,而不可能是其他社会契约者,因为洛克认为人自然状态下就已经很自由美好,斯宾诺萨否认人要转交信仰自由和思想自由,至于卢梭,那句赫赫有名的“人生而自由,却无所不在枷锁之中”显然与放弃自由以获取自由的说法不符)
至于认同宇宙的秩序(有时甚至可能是朴素的唯物)与服从绝对的意志其实并没那么一致,天主教很忌讳自杀,因为自杀一定是人的行为考量,是一种对神的亵渎,而斯派主张人与神能共享理性,天意是可知的(通过占卜等,还挺迷信),当人能以理性判断自我存在状态与决定自我未来时,他们就已经脱离宿命论的构想了,因为神秘主义并未遮蔽他们的双眼(而这种宿命论的考量就是该段话的大意)。
没有辩驳,真理也毫无意义(密尔的观点,因此思想与言论自由很重要),不过关于神学相关的我们可以收一收,不然会陷入经院哲学一般的空谈
当然,也不能片面看待唯心的一些东西,比如加尔文宿命论与宪政主义也有所关联,感兴趣的也可以自行了解
我在日站看见的一句评价,正因为“ビット腐敗”这部游戏才会有那么多无解之谜吧(笑)
前两遍感到的无机质、黄昏、秋色、停滞、颓废、绝望之类的氛围;如同陷入思考迷宫的忍一般的感觉。在之后的周目就彻底转换成如同伊玛一般守望登场角色们的心情。不管是圣域成员,还是南、宗多。他们努力挣扎、伤害彼此,努力生活的身姿。在伊玛的解说下,都显得美丽动人。
就像是三楼那位朋友在游戏简评里比喻过的那般,这游戏有一些《浮士德》的感觉。像是小世界与大世界的转换,激情与理性的碰撞,事实领域与价值领域的区分,自强不息、努力进取的“人类精神”。
第五周目、本周目是玩得最过瘾的一次。
另外,这游戏在前几年,唤醒了我学生时代之后、便荒废了的读书热情。
心理学那里,不太明白你指的哪个部分。心海潜航那边只是糅杂荣格与弗洛伊德,写着玩的吧。隔离记录3那段的关键词是“創発”、涌现、突现、emergentism。也就是指的复杂系统学与身心涌现论。
从蚂蚁、神经网络这些例子来看,口三才应该是看过约翰·霍兰德的《涌现》吧。
被这游戏推动着看书的感觉挺好的。
最果里哲学方面的东西倒是不多。那些得不出结论的命题,口三才都贤明地选择了悬置。
像是“人の認識を育む糧が、外界からの刺激であるためだ。”这种东西,更多是出于媒介理论和复杂系统学方面的考量。