現在公開中の劇場版『Gのレコンギスタ Ⅲ』「宇宙からの遺産」(以下、『G-レコ』)は監督自らが手がけた"富野純度100%"の作品です。ただ、監督は本作を「ガンダムではない」と公言されています。 富野 『G-レコ』とガンダムの大きな違いは、戦記物かどうかの違い、世界観の違いです。これまでの世界観のガンダムを作ろうとすると、戦場の名前が違うだけの同じようなお話になってしまう。しかも「宇宙世紀」は新しいお話が次々とできていて窮屈になっている。そこに新しい物語を入れるのは大変だし、興味もなかった。 だから、「宇宙世紀」から2000年がたった世界を想像してみたんです。人類は宇宙戦争で死滅しかけた。そこで生き残った連中が、歴史を取り戻していった......。そう考えたら、新しい物語を手に入れられると確信しました。 もともとテレビアニメシリーズの『G-レコ』は"子供番組"にしたかったのね。それは、まさに先の話にも通ずるところで、子供向けにすることで20年後、30年後も展開できる作品になるかもしれない。 「宇宙世紀」のファンは大人が多いから、彼らがいなくなったら途絶えてしまう可能性があるでしょ? できれば今の子供たちが大人になったとき、『G-レコ』の世界観を使って新しい物語を描いてほしいと考えています。 意識したのは、今の政治家、資本家、宇宙開発者は近未来の過酷さを考えていないってことです。本気で宇宙に進出して領土を確保しようと考えている人たちにわかってほしいのは、人類はアポロ計画でわずかな人数が月面に行って足が着いただけなのよ。 領地だなんだって考えるのバカじゃない? そもそも論として植民地にして何をするの? 宇宙で人が暮らすには空気と水が必要なんだよ? そこに移住して何年暮らせるの?ってことを何も考えていない。 今のロケットじゃ1000人からの人間を月まで輸送できないでしょ? だから『G-レコ』では、地球環境を汚さず多くの人・物資を運ぶことのできる軌道エレベーター「キャピタル・タワー」を設定しました。