2024-6-30 20:24 /
—企画に至るまでの経緯を教えてください。
    ゲームメーカー社員時代の後輩が、退職して別のメーカーに就職。その後に私も退職してフリーランスになった時、後輩から誘われたことがきっかけです。

—制作当時(PC版)の様子を教えてください。
    「作品性のあるゲームを作って欲しい」という依頼だったと記憶しています。漠然と「作品性]ということで、色々と試行錯誤をしました。私の場合、最初にクライアントから言われる一言をずっと気にしながらものを作る、ということが多々あります。それで必ずしも暴投しないということではないので、なかなか難しいところですが。

—記憶がバラバラに配置されており、パズルのようなかたちで話を整理していくのが本作の魅力のひとってあると感じているのですが、シナリオはどのように組まれたのでしょうか。
    本作については、ゲームシステム上、サブエピソードを思いつくだけ埋め込める仕組みになっています。そのおかげでシナリオ量が増えたというのはありますが、本筋はごくシンプルなものでした。ゲームは紙芝居でなければならないという考え方に対する反発も少しあったのかも知れません。
    ストーリーは最低限のシーンで無駄なく作る方が難しいもので、むしろいくらでも増やせるイマは書いていて楽な部分もありました。

—本作の世界観設定とは?
    PCゲームには、特定の季節や舞台を前面に押し出したものが多く存在します。特に顕著なのが春夏冬の三シーズンもので、秋はどちらかといえば少数派です。そのあたりを考慮しつつ作品性を出していくなら、あえて「儚さの象徴としての夕方」を描けるのではないかなと考えました。
    夕方というのは、短時間で夜に変化してしまうものですから、脆く過ぎ去りやすいものであるわけです。このイメージから「人類の黄昏」というもの悲しいモチーフも浮かび上がってきました。

—当時お読みになってい参考文献があれば何冊か教えてください。
         私は乱読派で、ひとつの分野を徹底研究することはありません。体系化されたものはなく、広くはあっても浅いだけの知識だと思います。
         ただ「最果てのイマ」では、こうしたでたらめな読書体験の集積が役に立ちました。とうてい全てではないですが、思い出せるだけいくつか挙げてみます。
  『偶然の本質』『ハッカーズ大辞典』『親族の基本構造』『自然現象と心の構造』『「知」の欺瞞』『創発』
         また個別の書名は思い出せませんが、脳科学やハッカー文化、複雑系、伝統芸能、弾道学などの本も手当たり次第に参照していました。
         フィクションですと大原まり子の未来視シリーズや筒井康隆の七瀬三部作あたりの影響を強く受けていると自分でも思います。あと『NIGHT HEAD』 。

—死に際の描写がない章二ですが、「樋口章二」という男についてお聞かせください。
  もともとこのソフトには「七人のミッシングリンク」という副題がありました。七人のメインキャラクターにとって重大な出来事を、あえて語らずに表現するという手法で描こうという構想があったのです。これにより、章二の死については直接的に言及されていません。
  章二にはグループの牽引役が与えられていたため、それを失ったことで主人公の認識には大きな停滞が起こることになりました。


—やはり気になるのは沙也加の存在ですが……「本堂沙也加」についてお聞かせください。
       人知を超越した存在として書いています。
  同じく人間以上である主人公の心情にはもっとも近づいたキャラクターじゃないでしょうか。ただ沙也加の力をもってしても、力の差がありすぎて、完全な慰めとはなりません。他のキャラクターについても言えることですが、この主人公グループはそういう意味で本質的に噛み合っていないということになります。悲劇的構造を宿した友情グループというのは、なんとも暗いモチーフですね。


—「折倉日立」だった頃の忍に裏設定はありますか?
       当時の資料をあたればいくらかありはするんですが、情報量が無駄に増加しそうなので、ゲームに採用されたのは一部のみです。


—その他、露出しなかった描写(裏設定)はありますか?
  ありはしますが、どちらかというと設定は必要なものしか作らない方なので、いずれにしてもたいした分量ではなかったはずです。構想のメモ書きなら膨大な量があったはずですが、今見ても全てを思い出すことは難しいでしょう。ただゲーム発売後にスタッフ一同で準公式同人誌を出した際に、裏側を描いたという設定の描き下ろしSSを一本寄稿しています。


—敵を超自我にした理由は?
       そいつを倒せばキレイサッパリ解決する、便利な巨悪というものがいない世界です。倒す敵がいないのに人類が黄昏を迎えるということは、種としての自壊を描くことなのかな、ということであの設定です。
  もう少し俯瞰してみると、ギャルゲーのご多分に漏れず、主人公の貴宮忍はハーレムのように多くのヒロインを当初から獲得している状態にあって、その優遇状態を正当化するために何かを喪失するというのは避けられない展開でした。
  たくさんのものを持っている主人公なら、たくさんの支払いを課す……こういうのもゲームバランスの調整と言うのでしようか?



—主人公の忍が自炊してるシ一ンがありますが、ご自身は料理されますか?
    そうですね、外食よりは自炊派です。
    料理好きというわけではないので、創作料理はほとんどしませんが。


—子供の頃、秘密基地はありましたか?
    ありました!
    枝や板を使って自分たちで作ったり、空き家にお菓子を貯蔵したりしていました。

—マイブーム、趣味がありましたら教えてください。
    最近はめっきり仕事が趣味です。
    それも身辺が気忙しくなってしまい、仕事が越味と言いつつ、それさえ没頭できないことも多々あり、歯がゆい思いをしています。
    ここ数年は、複数の仕事を同時に抱えることに限界を感じており、個々の依頼に専念できる態勢作りをなんとかして実現したいと考えています。


—最後にファンの方々にメツセーヅをお願いします。
    このゲームをお買い求めになるのは、フリークの方が多いのではないかとお見受けします。いつも買い支えていただき、誠にありがとうございます。
    最近ある種の割り切りができてきまして、変にメジャーを意識しないでもいいじゃないかと思うようになりました。前は意識していたのかと突っ込まれそうですが、していました。
    余力ができたら、またがむレやらにユアでマニアツクなゲームも作ってみたいと思ってます。その際には、なにとぞよろしくお願いいたします!
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