僕の生きる道

ep.6 悲しきプロポーズ

时长: / 首播:2003-02-11
 秀雄(草なぎ剛)が給湯室に置き忘れた薬を取りに戻ると、麗子(森下愛子)が職員室に一人残っていた。麗子は動揺を隠した。何気なく見た薬から秀雄の病気が何か知ってしまったのだ。一方、秀雄と別れて帰宅したみどり(矢田亜希子)は、久保(谷原章介)に交際を断ったことを父親の秋本(大杉漣)に伝えた。「みどりがこの人だと信じた人を信じるから」。秋本は微笑んでうなずいた。
 みどりが信じた相手は秀雄だった。2人は休日のたびにデートした。秀雄の授業にもリズムが出てきた。秀雄は麗子に相談した。「僕、みどり先生の彼氏でいいんですよね」。てっきり病気のことだと身構えていた麗子は、ホッと胸をなでおろした。
 「私、口固いから、どんなことでも相談してよ」。
 「彼女ができました」「秋本さん?」。金田医師(小日向文世)から図星されて秀雄は驚いた。「彼女に病気のこと言ったの?」「まだです」。今夜みどりが部屋に手料理を持ってきてくれる。「早く帰らないと」。秀雄はそそくさと診察室を後にした。
 「幸せそうでしたね」。看護婦の琴絵(眞野裕子)は微笑んで見送った。「そうだね・・・」。金田医師は真顔になっていた。
 「買ってきちゃった」。みどりがペアの汁椀をテーブルに並べると、秀雄はつい笑ってしまった。彼女が出来たらお椀でなはく、ペアのマグカップを夢見ていたのだ。
 「どうぞ」「いただきます」。恋人同士の幸せなひととき。秀雄はみどりの笑顔を見ながら心の中で祈った。『神様、お願いです。一分でいいから時間を止めて下さい』と。
 やがて秀雄が目覚めた時、隣には幸せそうなみどりの寝顔があった。秀雄の部屋に泊まったみどりは朝帰り。「いつ帰ったの?」「十五分くらい前かな」。平静を装うとする父親の姿がみどりにはかわいく見えた。その頃、秀雄はビデオカメラに向かっていた。「神様、黙っている僕はズルいですか?」。みどりにどう打ち明ければいいのか。まだ決心がつかない。
 秀雄は麗子に屋上に呼び出された。「私の目はごまかせないの」。秀雄と同じ薬を麗子の亡くなった伯母が飲んでいた。彼女に嘘は通じない。「余命十カ月ぐらいです」。秀雄がすべてを話すと、麗子は秘密を守ることを約束してくれた。そしてこう付け加えた。「私がみどり先生なら病気のこと話してほしいと思う」。
 その夜もみどりは秀雄の部屋に来た。「みどり先生、大切な話があります」。秀雄が切り出せないでいると、みどりが先に口を開いた。「私も同じ気持ちです。私と結婚して下さい」。みどりは自分からプロポーズするのが夢だった。「まずは父と食事をしましょうね」「はい」。秀雄は呆然としながらうなずいてしまった。
 「先生の家に泊めていただけませんか?」。突然、赤坂栞(上野なつひ)が思いつめた表情で職員室に現れた。しかも額に怪我をしている。みどりが自宅に連れ帰ったが、栞はあまりの豪邸ぶりに落ちつかず「中村先生のところに行きます。」と帰ろうとした。しかし、男性教師の家に女子生徒を泊めるわけにはいかない。みどりは事情を聞こうとするが「みどり先生には話したくありません」という栞の突き放したような口調にみどりはショックを受けた。
 翌日の放課後、栞は秀雄には打ち明けた。「父の会社、うまくいってないんです。私、大学行けないかも」。額の傷は両親のケンカを止めようとしてぶつけた。「世の中、不公平ですよ」。栞は行き場のないうっ憤をみどりに向けた。「美人でしかも豪邸に住んで・・・。あんな人に私の気持ちなんて分かるわけありません」「そんなふうに決めつけなくても」。秀雄が栞をなだめていると、廊下にみどりが立っていた。2人のやりとりを聞いていたらしい。
 秀雄の部屋で一緒に夕食を食べるのはすっかり日課になったが、その夜のみどりは元気がなかった。「本当に私、今まで深く悩んだことってないんです」。いや、一度だけあった。母親を亡くした時だ。「もう二度と大切な人は失いたくありません」。
その言葉は秀雄に重くのしかかった。「ちょっとコンビニに行ってきます」。一人になったみどりはふと部屋の片隅に置かれたビデオカメラに気づいた。部屋の何を撮っているのだろうか。みどりはビデオカメラに手を伸ばした──。

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