少年花嫁

あなたにかけられた呪いを解いてあげましょう。
三ヶ月間、香司の婚約者として世間を欺いてくだされば―――
松浦忍は一見するとごく普通の高校生、のつもりだった。
小さい頃から、初対面の人間には必ず女と間違われることを除けば。
心を痛めた忍が母親に理由を尋ねても、「ママがお姫様だった時に魔王に呪いをかけられたから」と、はぐらかされるばかり。
だがある日、忍は普通の人間には視えないはずの妖に襲われ、一人の美貌の少年に助けられる。
彼は御剣香司――魔を退ける陰陽師の香道・御剣流の後継者だった。
「ある人の代理を頼みたい」
助けてくれた香司の頼みを渋々ながら受けた忍が連れて行かれた場所は、広大な敷地に建つ豪邸・御剣家。
代々、人と妖の二つの世界の仲立ちをしてきたこの家は、今、大切な後継者の儀式、披露の儀の準備に追われていた。
「おまえはここで準備をしろ」
香司にそう言われた先には、贅沢な振り袖が――！？
流されるまま香司の婚約者として仕立てあげられてゆく忍。
だがさらに忍を待っていたのは、厳しい花嫁修行だけではなく、人と妖の世界を脅かす争いと陰謀だった……！！
たくさんの愛情をうけて育った忍と、厳格な世界で孤独に生きてきた香司。
ふたりは出会い、歩き出した。
長く辛い死闘の道を。
忍にかけられた呪いを解く――その日まで。