2021-12-13 19:59 /
評価点
後述する賛否両論点はあるものの、野球を軸に据えた熱いストーリーは評価されている。
弱小チームの成長や心象の変化など見所は多い。
良いエンディングを迎えるには運が絡むが、達成感はひとしお。
野球は順調に進化しており次回作で一つの完成形となる。
裏サクセス・ミニゲームの中毒性が高い。
前作より安定したバランスとなりこちらをメインでやりこんだプレイヤーもいるほど。
「俺のペナント」はサクセスで作成した選手で遊べるモードとして評価されている。
本作においては荒削りすぎるせいで選手が強くなりすぎるが、次回作以降で遊びやすく改善された。

賛否両論点
表サクセス

そもそも、表サクセス自体に賛否の声がある。本作のライバルキャラ「小杉」の設定にある。
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本作の表サクセスの大きな特徴は、本家パワプロシリーズとパワポケシリーズにも無かった、主人公が実質「パワポケ君(パワプロ君)」ではなく「小杉優作」という完全な第三者となっている点である。つまりプレイヤーは、姿かたちはパワポケ君とはいえ元々は脇役である人物の名前を決めるという妙なことをしなければならない。
後のパワポケシリーズでも「タイムパトロール」「ヒーローの生みの親」など突飛な設定の「パワポケ君」は存在するものの、あくまで突飛な背景を持つだけで基本は野球好きの人物というだけだが本作では明確に「小杉優作」という第三者が「(性格があまり良くない)パワポケ君」の体と入れ替わってしまっている。
トゥルーエンドではない別のエンディング(モグラーズは日本一にはなれなかったものの監督評価を維持出来たノーマルエンド)では、主人公は紆余曲折もあってようやく元の体*2に戻るが、「前の体のままでもいいや」と勝手に自己完結して黒野博士に前の体に整形してもらうという、あまりにも突飛過ぎる内容となっている*3。
監督評価が低いと、このシーンの後に荒井三兄弟からクビを言い渡されるという、非常に後味の悪いゲームオーバーを迎える。
この場合もとの体に戻った現小杉*4は塚本に捕まり「自分が入れ替わった後の小杉だ」と塚本に主張するが、「元の体に戻れたところで利用価値は無い」と言われ、海外へ兵隊として売られてしまう。
3年目で試合に勝ち続けると、現小杉が塚本と手を切って野球に打ち込むようになり、日本シリーズの試合前に繰り広げられる元小杉=主人公と現小杉の「お互いの過去と野球の才能のすべてをかけた対決」のやり取りはかなり熱く、この日本シリーズの勝敗に関わらず、「この二人が球界でも有名なライバルになる」というこれまた熱いエンディングがまっている。
しかし日本シリーズやエンディングでの「元小杉VS現小杉」のやりとりも、ゲームの中だけで勝手に盛り上がっていてプレイヤーは置いてけぼりを食らっている感が否めないという意見がある。
主人公(元小杉)と現小杉の因縁があると把握しているのは当事者同士と一部の人間のみであり、周囲がライバルとして持ち上げる展開に違和感が出てくる。また現小杉が覚醒して特訓を始める展開も、フラグが「モグラーズのリーグ優勝」であるため唐突感が少しある。
一応「若手エリート・(現)小杉」と「今まで芽が出なかった凡人・主人公」という対立構造が煽られている。
単純なことを言えば、「現小杉」だの「旧小杉」という状況が物語を非常にややこしくしている。
彼女候補は癖が強い。
プロペラ団の残党で智美を慕っていて現小杉に近づく「綾華」
幼く見えるが27歳のお水で入れ替わる前の主人公と交際して、展開によっては現小杉と心中する「恵理」
抜け忍でモグラーズのとある人物でもある「珠子」
モグラーズの仲間選手イサムと二股をかける「美咲」
倉刈仁志の娘で『2』『3』でも登場してたが本作で彼女候補になった「日出子」
ファミレスでバイトしてる初の緑髪キャラにして本作のランダムが酷い枠「めぐみ」
のりかの再来と言われるハズレ彼女「西湖美友」
裏を返せば『7』以降で賛否両論になる正史ヒロインの問題があまりないシリーズであるとも言える。
結構便利なキャラが多いのか後の裏サクセスで再登場するキャラが多い。
なお「美咲」は『4』の「秋生」とよくコンビを組んでグロ展開に巻き込まれることが多い。
「うろつき」のパチンコが強力。
ランダムで「よくとぶバット」「ラブダイナミクス」など強力アイテムが手に入るが、当たる確率は割と高いため育成理論に使われる事もある。裏を返すとやはり本作でも普通に野球していない。パワポケではよくあること。パチプロクンポケットと揶揄されるぐらいである。
この事もあってか次回作では「パワポケポイント」が登場するが、むしろこちらの方が賛否両論であるためか、アイテムを入手しやすい本作のパチンコを評価する声もある。
ただし勝つまで*5まで同じイベントが何回も繰り返されたり*6、特定のイベントでは、負けると「弱気」になったり、高確率で「チャンス×/負け運」を取得してしまったりと、バランスは取れていなくもない。ただし、一定量のイベントをこなせば30%の確率で4種の神器のうち一つが無条件で手に入るようになる。

裏サクセス
スターシステムで登場するそれぞれの城主の元ネタは「水虎→『1』の教頭先生、火竜→『2』の任月社長、月光→『2』の野々村監督」となぜか『2』から2人登場する。こういう三つ巴ポジの場合「各作品から1人づつ」ではないのか?
『3』からは亀田が別の所で出演しているが、他に憎まれ役ではプロペラ団のボスのMr.リッチモンドがいたし、『4』も天本セツや黒野鉄斎など城主キャラに使えそうな連中がいる。

問題点
表サクセス

AIの頭が良くない。
CPUの守備がザル。投手でプレイするとヒットを打たれやすい。特に低弾道の打球に異常に弱い。本作はただでさえ「主人公しか操作しない」ので場合によっては致命的になりがち*7。
外野にサブポジ持ちが起用されることが多め。
また、味方の守備のレベルが仲間評価依存のため、一年目の試合の方が活躍が厳しくなるという変なバランスも存在している。
逆に野手でプレイするならヒットを打つだけで評価は上がるためクリアしやすい。しかもサクセス中の相手投手はスタミナが切れても降板しないため、二・三年目の試合*8の3打席目くらいから相手投手の球が棒球と化すためヒットがかなり打ちやすいが、味方投手にも同じことが起こっている可能性があるため注意が必要である。
表サクセスの野球パートで操作できるのが主人公一人のみ。
つまり本作は今までのシリーズのように「あらかじめ決められた状況からスタート」ではなく、本家パワプロシリーズのように試合がどういう展開になるかは完全にランダムである。
そのため「試合で活躍して監督評価を上げる事」は安定するが「リーグ優勝して日本一を目指す」となると仲間評価を上げて他の仲間が頑張ってくれる事を信じるしかなく、運が絡む。
野手の場合は自分が打点を稼ぐことでなんとか勝つこともできるが、投手の場合味方が点を取ってくれることを願うしかなく、9回、10回になっても一点も取ってくれないこともあり引き分けか負けになってしまってストレスがたまることも多い。また、チームメイトの能力は全体的に低く、チーム自体ははっきり言って弱いためただでさえ勝つことが難しい*9。
ただ、試合で活躍すれば恩恵は非常に大きい。
打者だとホームランを打てば「パワーヒッター」が付いたり、チャンスで打てれば「チャンス○」が付いたりもする。しかしその反面、活躍できなければマイナス特殊能力を取得したりも。
一人が良い成績を残しても、チームメイトが活躍できないと試合に負けるというのはリアルではある。またモグラーズが弱いのも設定に忠実とも言える。
「ピンチ〇」を失いやすい。
今作は前述の通り試合で特殊能力を取得できる。
投手では得点圏にランナーがいる際に一定以上凡打を稼げば「ピンチ〇」、ヒットを打たれれば ピンチ×」を取得する。
だが、その条件は試合毎にカウントが蓄積されるため一定基準に達しやすい。特に投手時の特定圏にランナーがいるという状況は発生しやすく、どんなに抑えようとしてもヒットを打たれた回数が基準に達していまいやすい。
凡打にすればヒットを打たれたカウントが減る、アウトを取り続けて「ピンチ〇」をストック*10できるといった仕様もない。
「ピンチ×」の取得が三年目の終盤の試合で発生すると取り返しが付かなくなってしまう。
ピンチ〇ほどではないが、この仕様によりチャンス〇や勝ち運を終盤に失ってしまうことがある。
初期版では牽制すると球を取った野手を一切動かせないバグがある。このバグはその球を持っている野手の塁に走者が突っ込んでもタッチアウトにならない*11。表サクセスで相手が運良く牽制してくれた時に、その塁より前にいる走者を全てホームインさせることが可能である。
凡田や大神をパワーアップさせた場合、投手能力にはパワーアップが反映されず野手能力のみ変化する。
筋トレなどの経験点が大きく上がる練習が毎回できるわけではなく、期間限定にされている。
そのせいもあり、表サクセスではあまり強力な選手は作れない。おそらく、表サクセスの主眼が「強い選手を作る」から「シナリオを楽しむ」に変わったのは本作からと思われる。
ただし、「センス○」や「4種の神器」や「トルマリンの置物」などを早い段階で集めて、練習しまくったり、仲間や鬼鮫コーチのイベントをこなしたりすればオールB以上の選手を量産することは慣れれば可能である。 ちゃけ『4』より--一応、黒野博士の研究所に行けば、期間限定ではあるが前作『4』のような能力パワーアップはできる。当然、失敗して能力が下がるリスクはあるが。
ランダムで病気になる汎用イベントが複数用意されている。他のシリーズではあまり見られない仕様である。

裏サクセス
火竜編を選ぶメリットがない。
難易度が低く仲間も優秀な水虎、難易度は高いが優秀な選手を育成可能な月光と比べ、火竜は初期収入こそ高いものの主人公の使える忍術が最も威力の低い火遁の術で雇える下忍も貧弱と難易度も高く、それでいて選手の育成効率も月光に劣ると総じて中途半端。
中盤以降時間を持て余す。
運にもよるがゲームクリア条件自体は意外と早期に達成可能だが、水虎編以外は最終日まで粘った方が強い選手を作れる。
そのため天下統一やダンジョン探索、各地のうろつきイベントを一通り終えてしまうと最終日までやることがなく暇になり、プレイ時間も長くなりがち。
全体的に主人公以外の仲間が弱い。
今作の仲間は全体的に打たれ弱く、回復の術*12の性能も微妙なため戦闘で非常にやられやすい。
小山や根呂など防御力の高いキャラもいるが、そちらは逆に素早さが低く終盤になると敵に攻撃が殆ど命中しなくなる。
素早さが低いにも関わらず、「痛い一撃」や「致命的な一撃」を持っているミスマッチなキャラがいる。*13
給料が強さに見合っていないキャラが多く存在する。
ただし下忍は戦闘で倒されても補充が利く上に給料を払わずに済むため寧ろメリットだったりもする。
特定の戦闘以外では、HPが33%を切ると仲間が戦闘から逃げ出してしまう。
集中狙いされて一人の味方が逃げ出して戦闘が苦しくなったり*14、あと一歩の所で敵を倒せる場面で逃げ出したりと不便な仕様になっている。
「逃げる」の行動自体はコマンドで選択可能なため、足枷な仕様でしかない。
雑魚敵の十字手裏剣忍者が強すぎる。
本作の「○○忍者」という名前の雑魚敵は基本レベル1時の攻撃、防御、素早さの合計が45になっているが、この忍者のみ50になっている。割り振りは攻撃寄りになっており、高い攻撃力を持っている。
敵全体に2.25倍のダメージを与える爆弾を使用する。痛い一撃が発動する可能性がある「手裏剣」を投げる。一定の確率で被ダメを防ぐ「変わり身の術」を使用する。といった、おぞましいステータスを持っており水虎との戦闘時はこの忍者が出現しないことを祈る人が多く、本作のトラウマ候補である。
なぜこのような調整がされたかは不明。火竜か月光選択時の難易度上昇を狙った可能性がある。
水虎城の西側の関所には3体同時で出現する為、最大の障壁となっている。
表サクセス程ではないにしろRPGとしては運要素が強い。
主人公以外の仲間がオートで戦闘するため思うように行動してくれない*15、強力な仲間や野球パーツを拾って来る仲間に限って加入がランダムイベント、水虎城の西側の関所が妖怪に墜とされるか否かで水虎侵攻の難易度が大きく変化する、ダンジョンのボスを倒した時にランダムで手に入る特殊能力の当たり外れが激しいなど。
通常のRPGと違い日数制限やリセット時のペナルティ、固有キャラはHPが0になると生き返らないといったシステムもこれに拍車をかけている。
その他
本作で追加された「俺のペナント」はまだ粗削り
後のシリーズと違ってアレンジチームも使えたり3年プレイできるため、強力な選手を育成しやすい。

総評
野球パートも裏サクセスも順当な進化を感じさせる一作。
パワポケでは遊びやすい一作ではある。
その一方で、(シリーズ内では)比較的地味な一作でもあるが、モグラーズの歴史を抑えるには重要な一作である。

余談
後期版では、大神の部屋にうろついた時のイベントが追加されている。内容は大神が年上の女優と交際しているというデマを週刊誌に書かれ落ち込んでいるというもの。選択肢次第では大神がパワーアップしたり、特殊能力を取得できる。(初期版でもデータは存在する)。
シリーズ中でも地味な扱いを受けがち。『2』ほどモグラーズの原点というわけでもなく、『8』ほどアンドロイドを巡った別のテーマを据えたわけでもないのも一因だろうが。
ただ『小杉』自体は後の作品の裏サクセスでも良く再登場している。
『6裏』でも入れ替わったまま落ちぶれた姿で再登場。そのままだとマイナス特能満載で弱体化してるが、モグラーズ時代の仲間である倉刈仁志を助けるために助力したり、ランダムイベントを通すことでパワーアップして頼りになる仲間になったりする。
『9裏』ではレジスタンスのヘルガに惚れて救おうとしたり、『14裏』では主人公のアドバイザーとして親身に接してくれたりする。
計算だとこの頃にはミスターKが木村に入れ替わっており、大神グループで広川武美や雨崎千羽矢が生み出されているはずである。
今作のみ、ランダムで ゲーム自体が起動不能になる という重大なバグがある。
セーブデータの数値が異常になるのが原因だと考えられる。このバグに遭遇すると 起動できないので初期化も出来ない 。実際にネットでも「起動できなくなった」「中古で購入して起動できない」という声が多い。また、バグ自体の知名度は低いために接触不良などの勘違いをされやすい。
バグに遭遇する確率は極めて低いが、いつでも起こる可能性がある。発生した場合、バックアップ電池を取り外し、強制的にデータを吹き飛ばさなければいけない。
要するに、 バグに遭遇したら二度とそのカセットのデータは使えなくなる のである。
あくまで筆者の経験だが、次回作からはバグへの対処がされており、データが消えたとの警告文が出る。しかし、このようなデータバグが起きるようになったのは今作からである。
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